REPORT 現場リポート

New Yorkへ行きたいかー!!!? ニューヨークカメラマン日記 Season2 Vol.11

2022.07.26
制作技術・報道技術


こんにちは!
6月、私はロシアの軍事侵攻が行われているウクライナに入りました。


首都キーウ市の街並みを撮影中の筆者

 

首都キーウ市の街は人々で賑わい、オープンカフェでおしゃべりを楽しむ人、サイクリングデートをする人。美しい建築物に、音楽を奏でる人、観覧車を楽しむ人など、戦争中の国ではないと錯覚するほどでした。




キーウ市内の様子


しかし、その綺麗な景色の中でも、武器を携行した兵士が街のいたるところにみられ、検問所が市内にも数多く設置されるなど、厳重な警備が敷かれていました。
23時以降は外出禁止令が徹底され、日中の賑やかな街からは打って変わって静けさが街を包みます。そして、ほぼ毎日のように発令される空襲警報。低音の不気味な警報音がこだまします。

侵攻から4か月。キーウの市民はその空襲警報に慣れてしまい、慌てて避難することもない様子でした。そのような中でも、ウクライナ東部では今でも連日激しい戦闘が行われ、多くの命が犠牲になっています。
取材を通して、より多くの市民の声を日本に届けるためにインタビューを行いましたが、その中ではほぼ全ての人が「Мир(メイロ)」という単語を口にしました。私がウクライナ語で挨拶の次に覚えたのがこの単語。日本語で【平和】という意味で、この言葉はほぼ全てのインタビューで市民が求め、訴えている単語でした。


■取材の安全性について

戦争当事国での取材と聞くと、防弾チョッキなどを着用して砲弾が飛び交うような場所で撮影するイメージがあるかもしれませんが、そういった取材を私たちは行いません。
戦況の急変に備えて、防弾チョッキなどの安全確保グッズは常に身近に用意をしていますが、それが必要になるような「戦闘エリア」には近づかないのが大前提です。また、知らない土地での取材ですから、土地勘がある現地のコーディネーターを雇い、その指示に従って取材を進めます。それに加え、安全管理者が常に一緒に行動し、宿泊先を含む全ての取材先でシェルターなどの避難所情報を取得し、全スタッフにその場所と危険エリアを周知させます。
さらに空襲警報発生時などは速やかに取材を止め、シェルターなどに避難します。地雷設置の可能性があるエリアではアスファルトの上でしか行動しないとの制約も取り決め、戦闘地域や軍事施設には近寄らず、安全性を十分に確認してからの取材となります。私たちの取材班が行動するエリアは市民の生活エリアでの取材であって、戦闘地域ではないのです。
 

■地雷の恐怖

一方で、ロシア軍が一時占拠したエリアに残された爪痕は深く、学校や民家、病院、商業施設などは、ほぼ破壊され、その惨状は言葉を失うほどでした。
しかし、市民の復興への意識は強く、既に一歩一歩進み始めていました。
ところが、その復興を妨げる要素として【地雷】があります。ウクライナ軍がロシア軍の侵攻を妨げるために設置した地雷は場所と数を把握しているため、撤去は可能なものの、ロシア軍が地雷を設置して撤退した場所に関しては全く情報が無く、膨大な土地を手作業で探索しなければなりません。それが民家の庭だったり、公園だったり、学校のグラウンドに埋められているために、見えない恐怖との隣り合わせの生活が現在も続いています。




地雷のような爆発物の被害にあった17歳の男の子に出会うことができました。
スポーツも大好きで本来なら華やかな学生時代を過ごしていたはずでしたが、戦争で生活が一変したと言います。彼は戦地住民の避難を手伝うボランティア活動中に被害にあいました。全身には生々しい傷跡が残り、現在でもリハビリを行っています。そんな彼も「戦争が終わりますように 自分の家に帰れますように」とボロボロになりながら反戦を訴えていました。
地雷の被害も未だに後を絶たず、国内の地雷や爆発物を撤去するには少なくとも10年以上かかるとの見通しです。
 

■取材を終えて

21世紀の今、起きてしまったこの惨状を記録したいとの強い想いを持って、私はウクライナに入りました。
戦闘が行われたエリアでは瓦礫やガラスが散らばった上を、サンダルを履き、慣れた足つきで歩くおばあちゃんや、農作業に使う鍬で遺体の発掘作業を行う農夫。地雷の看板近くで、はしゃぎ回る子どもたち。道路の真ん中に乗り捨てられたロシア軍の戦車。ここでは伝えきれない程、見るもの全てが衝撃でした。

しかし、市民はこの惨状を嘆いているだけでなく、着実に前に歩み始めていました。取材で出会ったウクライナの人々は、会う人、会う人皆親切で、多くの笑顔にも出会いましたし、多くの涙にも出会いました。

この戦争が早く終息に向かうことを願いつつ、戦争の愚かさを今後とも伝え続けなければならない。メディアはその使命を担っていると改めて感じました。


朽ちた戦車の砲身に花束が・・・


 


筆者近影


 

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