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報道山岳班・冬の山岳訓練 2020

2020.01.27 制作技術

報道山岳班では毎年冬に雪山での訓練をしています。訓練のメンバーは少しずつ変わっていますが、山岳班全員で同じことができるよう、毎年同じ内容の訓練を繰り返しています。
昨年の様子はこちら

今年は記録的な暖冬で、日本各地でスキー場が困るほどの雪不足となっています。そのせいもあり山岳訓練の候補地も雪を求めて二転三転しました。我々は積雪状況を調べ、今回は長野県の浅間山と群馬県の谷川岳に向かいました。

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冬山ではグローブを濡らしてしまったり、着込みすぎて汗をかき体が冷えてしまったりなど、少しの油断が大きな問題に繋がります。特に実際の取材時には、寒さで細かい機材操作ができないと仕事になりません。そのため山岳装備の装着には細心の注意を払う必要があります。
また雪山を歩く際には、アイゼンと呼ばれる「鉄の爪」を滑り止めとして靴底に装着することもあります。アイゼンを装着することにより雪や凍った斜面でも滑らず進めますが、歩くには少しコツが必要です。独特の歩き方に慣れないとつまずいてしまったり、ひどい時には足元に引っ掛けて服を破いてしまうこともあります。

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靴にアイゼンを装着します ラッセルの先頭はハードワーク!

時には腰まである雪をかき分け、道を作りながら一列になって進みます。この雪をかき分ける進み方は「ラッセル」と呼ばれています。ラッセルでは前の人の歩いた後を踏んで行けるので後続の人は楽なのですが、道を作る先頭はとても大変で、数メートルで汗だくになってしまうくらいのハードワーク。体力を温存するために先頭を交代しながら進んでいきます。

時々現れる急斜面ではロープを使って懸垂下降をしていきます。ロープワークも防寒用のグローブをつけたままだと一苦労。

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防寒用グローブでのロープワーク ビバーク中

そして、荒天時などに万が一遭難してしまった場合を想定しての「ビバーク訓練」を行いました。
ビバークとはテントも張れないような緊急時に野営することをいいます。雪の斜面を掘って上から簡易テントをかぶることで風雪から身を守ることができます。

他にも特殊な山岳装備の使い方を訓練しました。
雪崩等に巻き込まれて、万が一雪に埋もれてしまったときの救出を助ける「ビーコン」もその一つです。
ビーコンとは登山時に身に着ける信号の送受信機で、このビーコンから発せられる信号を探すことで、雪に埋まった人の位置を特定できます。
もちろん、身に着けていれば雪崩に巻き込まれても大丈夫というわけではなく、まずは雪崩に巻き込まれないための危機管理、状況判断が大切です。それでも雪崩にあった場合の迅速な捜索のために、ビーコンは重要な山岳装備です。現地では真剣に操作方法を教わり、雪に埋めたビーコンを実際に探す訓練を行いました。

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これがビーコン 雪の中に埋めます

他にも、スマホ1台で簡易的に中継ができる専用アプリのテストも行いました。山中は携帯回線の通信環境が悪く、このテストでは映像が途切れる問題が発生しました。こればかりは訓練を重ねても解決しようがありません。5G技術導入など、今後の通信環境の改善に期待します。

我々はこのような山岳訓練を通して、山岳装備の知識や、登山の基礎技術を身につけ、どの様な状況下でも的確な対応ができるよう経験を重ねています。

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筆者