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山岳班は道なき道も進みます!

2019.02.14 制作技術

昨今の登山ブームと比例して山の事故は増え続けています。
日本テレビ報道山岳班では冬季の事故取材などに対応する為、群馬県みなかみ町で、山岳ガイドの指導の下、毎年恒例となっている「冬季山岳訓練」を行いました。

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宝台樹山から望む谷川岳方面 登山前の装備チェック

遭難現場での取材では取材をしている人が二次被害に遭わないというのが大前提です。
取材時は基本的に山岳ガイドの方に同行してもらいますが、不測の事態に陥り、万が一取材中に山岳ガイドの方とはぐれてしまうことも考えられます。そのような状況下では最終的に自分の判断で取材、もしくは下山しなくてはなりません。そのため、道がなく看板も埋もれている雪山の中で、自分の位置と現場の位置を把握する事がとても重要になります。

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動物の足跡しかない雪山 コンパスと地図を使って『読図』を行う

自分の位置と現場がわかっても、雪で覆われた場所では自分達で道を切り開かなければなりません。

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ラッセルは全身を使い後続のために道を作ります 先頭が作った道に沿って先へ進む

雪山では先頭が雪をかき分けて後続に道を作りながら進む『ラッセル』という作業をします。体が半分ほど埋まる様な雪山では、前に進むというのは想像以上に体力を使います。
また急斜面では『アイゼン』と呼ばれる、滑り止めの爪が付いた靴底に装着する登山用具を装着し、足下を確保しながら前進します。

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ロープを木に結び体勢を確保 二人一組で下降訓練

またアイゼンだけでは体勢を確保するのが難しい場所では、ロープワークも必要となってきます。ロープワークは安全管理としてだけでなく、「山間地以外の不安定な場所での体勢確保」「高所での撮影業務」など、活用できる場面が多くあります。またロープは普段の機材固定などにも応用できます。
しかし、これだけ注意をしていても避けられない事故が雪崩です。雪崩は突然起こるため、それを完璧に防ぐことはできません。
そこで取材時に雪崩の状況に遭遇した時の対応として捜索訓練・埋没訓練を行います。

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訓練では埋められた雪崩ビーコンを捜索 おおよその場所を特定したら棒を刺して確認

雪崩ビーコン』は、常に自分の体に身につけ微弱電波を送信する山岳装備です。

万が一雪に埋まってしまっても、この微弱電波を探すことで、埋まっている場所を特定することが可能となります。

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  雪崩ビーコン


雪崩に巻き込まれた人を探すときには救助する人が微弱電波を受信するモードに切り替え、埋まってしまった人を探します。
また雪崩に巻き込まれた人は雪の中でも呼吸を確保する為に、口や顔の周りを手で覆い呼吸ができるスペースを雪の中で作り、救助されるのを待ちます。
音も光も無く、雪の重みで体が動かせない様な状況を経験しておく事もとても重要になります。

 

このように様々なシチュエーションの訓練を積み重ねることによって事故や不安を軽減し、自身が取材や中継により集中できるようにしています。

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埋没訓練で埋められる筆者 この雪の中に・・・

とはいえ山の知識は自分達だけで学ぶには限界があります。今回行った「冬季山岳訓練」のように、定期的に専門家と訓練を行うことで山の知識が深まり、山岳取材・中継のスキルアップと安全性を高めることができます。
そしてこれら雪山での訓練は、都心での大雪時の中継や取材でも活かせる技術だと感じました。

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筆者