REPORT 現場リポート

読売理工医療福祉専門学校向けに特別講義をやりました!

2021.03.04
ポスプロ技術・報道編集

NiTRoでは、読売理工医療福祉専門学校から依頼され、毎年数回の特別講義を行っています。この講義は、放送業界を目指す学生さんたちに現場で働く私たちの生の声を聴いてもらい、より関心を深めてもらう事が目的です。今年は報道編集を担当している私にも「やってみないか?」と声が掛かりました。人前で講義する機会などそうそうありませんし、自分の体験談が学生たちの身になればと思い、今回引き受ける事にしました。
 
■ 準備と経過
今回は2週にわたり、私を含めて三人で講師を務める事になりました。一人は『CVセンター(日本テレビの報道編集を担当する部署)について』、もう一人は『編集について』講義をし、そして私は『報道について』話すことにしました。
今回はコロナ禍ということもあり、学校での講義ではなく初めてのリモート講義となりました。
ミーティング用のZoomを使用し、資料なども画面共有でしっかりと示しながら、質疑応答を行う形式です。私も放送業界志望だったので、学生のころに似たような講義を受けたことがありましたが、正直なところ専門的な話が次々と出てきて、眠たくなってしまった経験がありました。
私の講義でも難しい言葉で独りよがりになってしまっては、同じように眠気に襲われてしまうだろうと考え、なるべく学生の皆さんが食いつくように、写真やイラストを多めにし、キーワードで分かりやすいようにしました。日々の業務をこなしつつ準備を進めて来ましたが、過去に講義をした人から資料やアドバイスも受けた事が大きく役立ちました。
ただ、ここで大きな問題が…。実は、私はプレゼンテーションソフトのPowerPointを扱ったことがありません。そこで写真・画像加工ソフトのPhotoshopを使って画像を作り、紙芝居方式でめくっていく事にしました。実際の講義ではコロナ禍のため対面ではなくZoomで行ったため見た目は同じようにできました。何度も原稿と資料を推敲しつつ、リハーサルを重ねて本番に臨みました。


会社の会議室でのリモート講義風景

■ 講義について
講義の中で、私が一番伝えたかったテーマは『報道と社会の繋がり』でした。
これは、私自身この仕事に携わってから最も大きく感じていたものです。私は10年前の東日本大震災の際に岩手に編集業務の応援に行く機会がありました。この時、実際に被災地を目の当たりにしました。震災直後の物資の少ない中で食事の節約、節電や節水が行われ、仕事が終わって宿に戻る際に目にした「灯りの消えた街並み」は筆絶に尽くしがたいものがありました。一方で、現場のスタッフは余震に気を使いながらも、被災地を丹念に回って、そこに暮らす人々に必要な情報を発信し続けていました。
今の若い人は自分の趣味に大きなウエイトを置いている人が多いと聞きます。しかし、その趣味が社会の色々な事柄にリンクしていると考えられるようになれば、広い視野で物事を捉えられるようになるのではないかと考え、私は報道の仕事を雑学的に話すようにしようとしました。
 
まず1週目の講義では主に私自身の報道編集業務に関して話しました。事件・事故の取材から、編集してOAするまで、生放送で流れる時間を逆算しながらどのように組み立てるのか?
ドラマやバラエティーなど他の番組と比べて編集にかける時間の違いなどを説明しました。
また、テレビ報道の歴史を紐解きながら、ニュースの役割と社会に与える影響などを話しましたが、
特に「取扱注意」となる映像に関しては、時間を割いて話しました。視聴者が「なんでモザイクかかってるの?」と疑問に思うような例を挙げて理由を説明しました。スポンサー提供が載る場合や、個人情報や機密情報の保護、容疑者の手錠にモザイク(デフォーカス)をかけるようになったきっかけの事件である「ロス疑惑」を説明すると学生たちの興味を引いて目の色が変わっていくのが分かりました。

 
講義で使用した資料の一部

翌週は『報道と社会の繋がり』についてお話しし、より学生に身近なものを織り交ぜました。
スポーツやアイドル、ゲームなど、自分の好きな事から広く関心を持つことが、実はニュースを編集する上でも役に立つと説明すると、「意外だ」といった反応が返ってきました。また、新型コロナやアメリカ大統領選、令和改元などの話題は日々のニュースとして過ぎ去るのではなく、この先も歴史に残る転換点だと捉えると、その事柄に関われる誇りと責任に対する関心も伝わって来ました。
さらに、最近では視聴者提供による映像も多くなっている事から、映像の真贋や本質を見極める「メディア・リテラシー」に関しても話しました。これに関しては、説明しながら自分でもしっかりと肝に銘じなければならないと感じました。


Zoomで画面を共有しながらの講義する筆者

■ 講義を終えて
リモート形式の講義にもかかわらず、学生の皆さんからたくさんの質問を受け、報道というものに少しでも興味を持ってくれたのが嬉しかったです。「編集をする上では、どんな知識でも立派な武器になる」という話は特に興味を引いたようで、講義後のアンケートにも多くの感想を書いてもらいました。私の経験を例に挙げたニュース番組の裏事情的なものも楽しく聞いてもらえました。
今回、学生さんに講義するにあたって自分の特色を出すことには苦労しましたが、資料を作成するときも学生に楽しんでもらえるように心がけました。テーマに沿って構成を考え組み立てる作業は編集に通ずるところもあります。業務の合間の資料作りでしたが、自分自身も楽しめました。
ニュースは生き物です。現場の私たちも日々変わっていく社会に対応して業務を行なっていますし、ひとりひとりの“興味”や“好き”が戦力になる場所です。講義を受けてくれた学生さんにも自分の中での武器を発見してもらいたいです。

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