REPORT 現場リポート

水中の世界へ  ~若手報道カメラマンの奮闘~

2023.08.15
制作技術・報道技術

こんにちは! 報道技術部カメラマンの佐々木です。
入社5年目・カメラマンになって2年目です。

日本テレビ報道局には、「水中班」というカメラマン8名・記者3名の水中取材専門のチームがあります。
「水中といえば、N●K!」と思われがちですが、日本テレビも水中取材を行っております。
今回は、2泊3日で行われた水中班の訓練の様子をお伝えしたいと思います。


■ 水中取材は普段見られない景色ばかり
水中には、日常生活で見られない光景が広がっています。
沖縄でカメを取材したり、東北でサケの遡上を撮影しています。

そんな”非日常”を視聴者の皆様にお届けするのが、水中カメラマンの役割。
私たちは、全国の海を取材しています。




一方、水中取材は命の危険と隣り合わせです。
安全に取材をするために、年に二回訓練を実施して、技術を高めています。


■ 1に安全・2に安全・3に安全
毎年訓練でお邪魔する伊豆海洋公園は、「ダイビング発祥の地」として知られ、
休日には多くのダイバーが訪れます。

私たちは今回の訓練3日間で、6回ダイビングをしました。
みんなでタンクを背負い、すべての装備がきちんと動くか確認をして、海に入ります。
水中では、1つの機材でも適切に動かなかったら、ケガするだけでなく、命を失う危険もあります。
そのため、細心の注意を払って何度も何度も確認します。
この準備作業も5年もやっているとスムーズに行えるようになりました。


準備の様子。水中は機材が多いので、一個一個ていねいにチェックしていきます。

水中にエントリーして、撮影開始。
海の中では、クマノミやエイなど、様々な生物を撮影していきます。
水中では空気の量が限られているため、テンポよく撮影していく必要があります。


もうすぐ生まれる卵を守るクマノミ。可愛いですね。

僕は、地上と同じく美しいライティングになるように、照明担当としてカメラマンの横で、
照明を配置していきます。
水中ではコミュニケーションが取りにくいので、事前にカメラマンと打ち合わせをしていますが、
カメラマンの意図した場所に照明を持っていくのは大変難しいです。
今回は阿吽の呼吸で、スムーズに撮影することができました。


カメラマンの横で水中ライトを持っている筆者(右のオレンジのスーツ)

水中班に入って月日が経ちましたが、ようやくスムーズに取材ができるようになれたと実感できた訓練となりました。


■ めざせ海猿?! ハードな水中訓練
訓練では海だけでなく、プールを使用して効率的な泳ぎ方や筋力強化の訓練を受けます。
これは、有事の際に役立つ欠かせない訓練です。
映画「海猿」で「生きて帰ってくる」というセリフを耳にしますが、それは本当に大切なことで、そのために訓練を行います。

まずは、50mプールを10往復します。水中班に入って5年、このくらいはできるようになりました。
次に、ダイビング器材を1つずつ外しながらプールを往復する”適性”訓練をしました。
「これは海で器材をなくしても陸上まで帰ってこられる」適性を見る訓練です。
最初にマスク(ゴーグル)を取って目を開けて泳ぎます。目に激痛が走り、鼻にも海水が入り込みます。
次に、フィン(足ひれ)を片方取って泳ぎます。まったく前に進みません。
さらに、もう片方のフィンを取って、クロールで一周します。
そして、外した器材を1つずつ装着しなおして、プールを往復していきます。
上がった時には、「目が痛い・鼻が痛い・ヘトヘト」でした。


適性訓練。一番奥で遅れ気味なのが筆者。

次は、深さ5mのプールに6kgのウエイトを沈め、水底まで取りに行き、そのまま2分間立ち泳ぎをする訓練。
映画「海猿」で見たことある訓練です。忍耐力と泳力が求められます。
足にドンドン負担が掛かってきて体力は限界になります。
ラストスパートは頭の上に重りを挙げます。


先輩に囲まれ立ち泳ぎの訓練。先輩は笑顔ですが、僕は必死です。

過酷な訓練ですが、これも安全に取材から帰ってくるために欠かせないものです。
先輩方はスムーズにできているので、僕も先輩方を目指して、引き続き頑張っていこうと思います。


■ 仲間は全国に
今回は、コロナも落ち着いたことで、読売テレビ(ytv)の皆様と訓練を実施しました。
ytvも比較的若手が多く、同年代の方もおりました。
みなさん、プライベートでもダイビングを積極的に行っているようで、ダイビングに慣れてらっしゃいます。
年二回の訓練だけでなく、プライベートでも潜っていきたいと決意しました。
お互いを意識しつつも、切磋琢磨しながら、一緒にNNNの水中取材技術を高めていきたいです。


NTVとytvのカメラ並んで撮影。大きなカメラ2台並ぶと威圧感がすごい!



■ 水中取材はチーム戦 地上での事前準備とコミュニケーションがすべて
沖縄の海に軽石が漂着した事件や東日本大震災の復興をめぐる取材など、水中にも”ニュース”がたくさんあります。
しかし、地上と水中で圧倒的に違うのは、水中ではコミュニケーションが取れないことです。
そのため事前に地上で相談して、しっかりとプランを立て、スムーズに撮影していくことが必要です。
ほかのカメラマンと普段からコミュニケーションを取り、意思疎通を図ることで、
水中でも以心伝心、チーム一体となって取材を進めることが可能になります。


水中カメラを持って撮影する筆者。1ダイブだけ撮影に挑戦しました。

地上取材と同じように、撮影チャンスは”一瞬”で、撮り逃さないためにはたくさんの知識が必要です。
「撮影技術・生物知識・ダイビング技術・体力・判断力」すべて求められます。
その求められるものを一つずつ確実にこなし、安全な撮影現場を作れる水中カメラマンになりたいと思います。

一日も早く一人前の水中カメラマンになれるよう、
奮闘しようと決意した訓練となりました。


機材準備する筆者

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