REPORT 現場リポート
『初めての雪山訓練 報道山岳班の現場を体験』
報道局には山岳取材班があります。
報道局山岳取材班は、雪崩や遭難事故が発生した際に、現地に赴いて取材を行うことがあります。そのような現場では、基本的には雪崩現場には入らず付近で取材しますが、後日、雪の状態が安定していれば、ガイドや専門家の指導の下、近くの安全が確保できる場所まで行くこともあり、時には腰まである雪の中を進みながらの取材となることもあります。
気温が低く、足元も雪や氷で不安定な状況ですが、その中でも確実に撮影し、安全に行動しなければなりません。わずかな判断ミスが重大な事故に繋がるため、専門的な知識が不可欠であり、特殊な装備に慣れておくことが必要になります。
どのような状況でも安全に取材ができるよう、山岳班では毎年、雪山での訓練を行っています。山岳班に入ったばかりの私にとって、今回が初めての冬山訓練です。
今回は群馬県のほぼ中央にある赤城山で雪山訓練を行いました。
雪山登山のほかに、初めて経験する内容の訓練ばかりで、ついていけるか不安でした。ドキドキしながら迎えた訓練当日。連日晴れが続き雨不足となるなかで迎えた訓練初日、残念ながら雨となりました。
同行してもらう山岳ガイドの方と相談し、安全を考慮して谷川岳の麓で研修を行うことになりました。
■ まずはビーコンを使用した捜索訓練
雪崩などに巻き込まれ、万が一雪に埋もれてしまったとき、救助を助けてくれるのが「ビーコン」です。
ビーコンとは信号の送受信機で、登山時に身につけることで、万が一の時でもこのビーコンから発せられる信号を探すことで、雪に埋まった人の位置を特定できます。
もちろん、ビーコンを使う状況にはなりたくありませんが、それでも雪崩に遭った場合の迅速な捜索のために、ビーコンは重要な山岳装備です。実際に初めて触りましたが、操作自体は簡単で分かりやすいものでした。しかし、いざというときのために、皆真剣に取り組みました。

ビーコンで位置を特定

目印を立て素早く慎重に掘っていきます
■ 続いてフィックスロープ訓練
山では岩場や急斜面など危険な場所を移動することもありますが、雪山で重い機材を背負う状況では、滑落の危険性が増します。
そんな万が一のリスクに備え、役に立つのが、「フィックスロープ」を使っての移動方法です。斜面にある木や岩場に固定されたロープ(=フィックスロープ)に、自身の体に装着した別のロープを繋ぎながら移動することで大きな滑落を防ぐことを目的としています。
今回の訓練では、二人一組でのフィックスロープの張り方を学びました。
この技術は拠点と取材場所を何度も往復する我々にとって、非常に重要なスキルです。
1人がロープを張りながら登り、もう一人が滑落した際に備え、ロープを握り、安全確保を担当します。
私は安全確保の役割を担当しました。その際に、登っている相手が滑落した想定で実際にロープに体を預けてもらいました。その瞬間、想像以上に強く引っ張られ、支えるのがやっとでした。「人の体はこんなにも重いのか」と、その衝撃を肌で実感しました。
フィックスロープの技術は登山だけでなく、災害現場など他の足場の確保が難しい場所でも広く活用されています。

過去のロープワークの様子、実際に山の斜面で訓練します
■ いよいよ雪山登山!!
冬の山といえば、一面の銀世界、膝まで沈む深い雪、そしてラッセル(雪をかき分けて進む歩行)。そんな“本格的な雪山”での訓練を想像していました。しかし今年は雪が少なく、場所によっては積もっているものの、「膝まで雪」というよりは「ところどころ足首ほどの雪」でした。

霧で視界が悪くなることも
とはいえ冬山では、着込みすぎて汗をかき、体が冷えてしまうなど、少しの油断が大きな問題につながります。特に実際の取材時には、寒さで細かな機材操作ができないと仕事になりません。そのため、山岳装備の装着には細心の注意を払う必要があります。
また雪山を歩く際には、アイゼンと呼ばれる「鉄の爪」を滑り止めとして靴底に装着することがあります。アイゼンを装着することで、雪や凍った斜面でも滑らず進むことができますが、歩くには少しコツが必要です。独特の歩き方に慣れないとつまずいてしまったり、ひどい場合には足元に引っ掛けて服を破いてしまったりすることもあります。私も足がもつれ、何度も転んでしまいました。

初めてのアイゼン装着
慣れない山岳装備に苦戦しながら、ようやく山頂に到着しました。しかし本当の試練は下山でした。
積もった雪が少ない代わりに、地面がしっかり凍っていたのです。場所によってはツルツルの氷の上を歩いているような状態で、ただでさえ下り坂は滑りやすく、より一層の注意が必要になりました。私も何度も滑ってしまい、最終的には尻餅をついたまま進むこともありました。
実際の取材でこのような凍った場所を撮影機材を持って移動すると想定しながら、どのルートを通れば安全か、どう歩けば転びにくいかなどを考えつつ、やっとの思いで下山しました。自然の過酷さを改めて実感する、身の引き締まる訓練でした。

ぬかるんでいたり、凍っていたりで大変な下山
■ 雪山訓練を終えて
今回の訓練で、重たい機材を想定して歩いたり、滑る斜面を慎重に進んだりすることで、冬山での撮影環境を体験することができました。山岳取材は常に危険と隣り合わせです。しかし現場の状況を伝えることが山岳取材班の使命であり、その責任の重さを実感しました。
現時点では自分の技術も経験も十分ではありません。だからこそ訓練を重ね、安全を担保できる力を身につけたいと思います。

人生初の雪山登山に挑む筆者