REPORT 現場リポート
ロヒンギャの今
「ロヒンギャ」をご存じですか?
ロヒンギャは東南アジアのミャンマーに住む、「世界一迫害された少数民族」とも言われているイスラム系の民族です。
ミャンマーの政権による武力弾圧から逃れ、隣接するバングラデシュに数十万人規模で流入し、それ以降は「難民」となり、キャンプで暮らしています。
私たちは、2023年2月に、ロヒンギャ難民キャンプの取材を行いました。


ダッカ市内の様子
私たちは、まず、バングラデシュの首都ダッカ市に入りました。
2月でも、ダッカの天気は穏やかで、半袖で過ごすにちょうど良い気温でした。
世界最貧国のひとつと言われ、テロや治安の悪い国というイメージがあったバングラデシュ。
その首都ダッカ市は、それまでのイメージを払拭するように、高層ビルやブティック、ホテルが建設され、街を行き交う人々の表情は明るく、発展中の活気のある国の中心だと感じました。


コックスバザールの海岸
ダッカから約300km離れた、ミャンマー国境に近いバングラデシュ国内でも有名なリゾート都市、コックスバザール。
砂浜の海岸線は「世界最長のビーチ」とも言われとても夕日が綺麗な場所でした。
そのビーチから車で約1時間程度の場所にロヒンギャの難民キャンプはあります。
難民キャンプに入ってまず思ったのが、子供の多さです。
「ゴミの浮いている川で遊んでいる子。」
「平日の昼間なのに売店で働いている子や家事をしている子。」
学校には行ける子もいますが、教室はぎゅうぎゅう詰めで勉強しやすい環境とは言えません。
でも、難民キャンプ内でカメラを構えると、すぐに子供たちに囲まれ、外国人の私達にも、子供たちは本当に無邪気に話しかけてくれます。その表情はとても可愛く、深刻な立場に置かれた民族の難民キャンプにいることさえ忘れてしまうほど賑やかで楽しい雰囲気でした。

しかし、彼らを取り巻く生活環境は劣悪で、実際に難民キャンプに暮らす女性は「殺されるかもしれないから夜は出歩けない」と現状を話してくれました。
「粗末な住居」「男女や年齢による差別」「教育環境の欠如」「子供や女性に対するDV被害」「治安の悪さ」など、取材を進めるにつれ、解決しなければいけない問題を切実に感じました。
日本に生まれた私は、自分で住みたい場所に住み、行きたい場所に行き、自由な選択が出来ることが世界のスタンダードであると思っていました。
しかし、それは間違いで、ロヒンギャの人々だけではなく、同じように「ふるさと」を追われ、自由を奪われ、衣食住さえ確保できない人々が、世界にはいるということを改めて感じました。
ロヒンギャの人々が、強く求めていること。
それは、生まれ育った「ふるさと」のミャンマーで再び平和な生活を送ることでした。

ロヒンギャ難民キャンプ内の様子
今回の取材で、この劣悪な環境の中でも、ロヒンギャの人々が、希望を失わず自立しようと頑張っている姿を見ました。ロヒンギャの人々と直接話をすることができたことで、私自身、改めて難民問題について考える機会を得られました。
ニュースの現場で取材していると、ロヒンギャの問題だけではなく、ウクライナでの戦争など、世界各地で起こっているいろいろな出来事が身近に感じられます。
報道カメラマンである自分にできることは、その現状をつぶさに撮影し伝えることです。
自分が撮影した映像が、放送されることで、現状への理解を深める助けとなり、食料や医療などの難民支援の輪がもっと広がればいいなと感じます。


ロヒンギャ支援施設を取材する筆者