REPORT 現場リポート
ニューヨークカメラマン日記 Season3 Volume6
■ SF映画のような世界が現実に!!人間の脳とコンピューターを接続する新技術
トランプ大統領の支持を表明し、アメリカだけでなく世界中への影響力を増すイーロン・マスク氏。
電気自動車や宇宙事業など、様々な分野で革新的な技術を展開している彼は、医療の分野でもベンチャー企業「ニューラリンク」を率い、人間の脳に直接チップを埋め込み、コンピューターの操作などを可能にする「脳インプラント」の開発を手掛けています。脳とコンピューターを直接つなげるという、まるでSF映画のような話ですが、ニューラリンクはアメリカの規制当局の承認を得て、昨年から臨床試験の段階に入っています。
その技術が実際にどのようなものなのか取材するため、臨床試験で初の被験者となった男性を訪ねました。
アメリカ西部アリゾナ州
■ 被験者ノーランドさん
ニューヨークから飛行機と車を乗り継ぎ、10時間ほどかかるメキシコと国境を接する町、アリゾナ州・ユマ。
この町に住む、ノーランド・アーバウさんは、8年前、湖に飛び込んだ際に脊髄を損傷し、首から下を動かすことが出来なくなってしまいました。大きな障害を抱えるノーランドさんですが、ニューラリンクの「脳インプラント」初の被験者に選ばれ、昨年1月、脳にチップを埋め込む手術を受けました。
首から下が動かせないため、家族の介助を受けながら生活するノーランドさんですが、脳にチップを埋め込んだことで、日常生活でできることが増えたそうです。
ニューラリンクの被験者 ノーランド・アーバウさん
首から下は動かすことが出来ず、家族の助けをかりながら生活しています
■ 驚きの技術「脳インプラント」
脳に埋め込まれたチップを使って実際にコンピューターを操作する様子を撮影させてもらうと、そこには驚きの光景が広がっていました。
画面上のポインタを高速で動かし、チェスのゲームを楽しむノーランドさん。ポインタを動かしてキーボードをタイピングすることで、検索やメッセージのやり取りなどもかなり速いスピードで行っていました。
この技術は、埋め込まれたチップが脳波を検知して、それを元にコンピューターのポインタを動かしているそうですが、ノーランドさんの操作方法は、「ポインタが〇〇か△△へ動けと考えて動かす」方法と、「自分の右手を動かそうとすることでポインタを制御する」という2通りの方法があるということでした。
右手を動かそうとする方法で操作を行っているときも、障害のあるノーランドさんの右手はもちろん動いていませんでしたが、あまりの操作スピードの速さに、私も撮影しながら「本当にノーランドさんが操作しているのか?」と疑ってしまうほど、驚きの技術でした。
ものすごいスピードでポインタを操作していました
思いのままに操作することが出来るそうです
■ 「脳インプラント」で広がるノーランドさんの未来
ニューラリンクの技術を活用すれば、コンピューター上でビデオゲームなどもできるそうで、現在は、オンラインで友人とゲームやチャットを楽しんでいるノーランドさん。自分でコンピューターを使えるようになったことで、新たに日本語の勉強を始め、いつか日本に行きたいという夢も語っていました。
実際に脳にチップを埋め込むという、これまででは実現できなかった技術によって、将来への大きな希望を持ったノーランドさんはとても晴れやかな表情をしていました。
日本語も勉強していて、とても多くの言葉をしゃべっていました
家族との団欒の時も希望に満ちた表情でした
■ アメリカの最先端医療
アメリカの医療の分野では、新薬や今回のような臨床試験が日本に先駆けて承認されることが多く、最先端の医療について取材する機会があります。そのような技術はのちに日本でも展開される事が予想されるため、引き続き、様々なジャンルにアンテナを張って、最先端の技術の情報を日本に届けていきたいと思います。
日本に大きな関心を持っているノーランドさんは、いつか皆さんの前でニューラリンクの技術を実演する日が来ると思います。その時を楽しみにしていて下さいね!!
取材クルーとノーランドさん(筆者右端)