REPORT 現場リポート

リニア編集からノンリニア編集への移行

2021.05.21
ポスプロ技術・報道編集

NiTRoポスプロセンターにおける、ここ数年の大きな変化の一つに「リニア編集からノンリニア編集への移行」が挙げられます。SHIODOME 19BOX内だけで8つの編集室(3、4、5、6、10、24、25、27st)がすでに稼働を始めており、今後もさらなる移行予定があります。
ではなぜ、移行しているのか?そもそもリニア編集・ノンリニア編集の違いは何なのか? 皆さんはご存じでしょうか?
今回の現場レポートでは「リニア編集からノンリニア編集の移行」の理由に加えて、それぞれの編集方式の違いから両者のメリットに至るまでを説明します。

■ リニア編集室
こちらがリニア編集室の様子です。数多くのモニターと手元に多くのボタンが並んでいるのが分かります。リニア編集とは簡単に言うと「テープ to テープの編集方式」です。

 
(左) リニア編集室内              (右) 映像を選択する「スイッチャー」           

複数のデッキにテープを入れ、一方を素材が入っている[出しの]テープ、もう一方を[受けの]テープとし、必要なカットを頭から順番にコピーしていくことで放送用のVTRを仕上げていく作業方式です。そのため[受けの]テープにコピーするにはカット時間分の実時間を要します。
ビデオテープに直線状に並んだ映像を順番にコピーをしていくことになるため、「直線的」=リニア編集と呼ばれています。

 
(左) VTRラック           (右) HDデジタルVTRデッキ

■ ノンリニア編集室
一方、こちらがノンリニアの編集室の様子です。リニアの編集室と比較すると機材が少なく、編集室自体もスッキリしています。ノンリニア編集とは「ランダムアクセスが可能な非直線的編集方式」のことです。具体的にどのようなことを言っているのでしょうか。ランダムアクセスとは、編集したい箇所を自由に追加・削除・修正・並び替えが可能なことを指します。
これらの操作をVTRの順番通りでなく、どこからでも出来ることから「非直線的」=ノンリニア編集と言われています。

 
(左) ノンリニア編集室内           (右) ノンリニア編集画面

■ リニア・ノンリニアの違い
では、ここからはそれぞれの「編集方式の違い」について具体的に説明します。
私が編集作業をしている中で、特に両者の違いを感じるのは「テロップ入れ作業」の時です。
 
こちらがテロップ作成機材です。この機材を用いて書体や色を決めることができます。
リニア編集においては、上記機材でテロップを作成→送出することによって、スイッチャーでテロップの出し方(effect)を組み→都度収録(Rec)しながら、一つ一つ作業を進めていきます。
一方、ノンリニア編集においては、作成したテロップを随時、ノンリニアの編集機に送ることができるため、テロップのeffectを組む作業とテロップを作成していく作業を双方で同時に進めていくことができます。またテロップを修正する際は、リニア編集では一枚一枚同じエフェクトを組みなおす必要があるのに対し、ノンリニア編集ではテロップ作成機材でテロップを更新するだけで修正が完了します。

 

ここまで聞くと、リニア編集よりノンリニア編集の方が効率的で手間が少なく感じるのではないでしょうか。
確かに、テロップ作成とテロップ入れ(effectを組む)作業が同時進行可能な点は便利です。またテロップを修正したいときに再度エフェクトを組みテープに入れ直すなどの手間はノンリニア編集にはありません。しかしながら、大きな違いとしてリニア編集はテープに直接作っているのに対して、ノンリニア編集はあくまでパソコンのデータ上で作業をしています。
つまり、データ上で一度VTRや番組を完成させた後に、搬入用ディスクにコピーしなくてはいけません。

よって、どちらも一長一短があり、どのような番組制作をするかによって編集方法を変えるのがベターな方法です。例えば生放送番組の短いVTRなどであれば直ぐにテープ搬入できるようリニア編集で、事前の収録番組で直しや修正などに対応できるようにするのであればノンリニア編集で作業することによって、無駄な手間をかけることなく作業を進めることができます。

■ これからの編集は・・・
しかし冒頭にも述べたように、ここSHIODOME 19BOXにおいて徐々にリニア編集室はノンリニア編集室へと移行しています。その背景にはリニア編集機材の多くは2018年時点ですでに製造を終えており、今後の保守・運用が不可能になるという要因もあります。
今後は搬入用ディスクでなくデータ納品が可能になる日も近いのではないかと思います。そうすることによって、よりノンリニア編集に即した編集体制も構築されていくのではないでしょうか。

 


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