REPORT 現場リポート

日本を震撼させたあの事件…報道編集マンの舞台裏

2022.10.04
ポスプロ技術・報道編集

■生放送の要「CVセンター」
今回の「現場リポート」は、日本テレビのCVセンターで働く栁下と近藤の2人がお届けします。
日テレの地上波では、早朝4時30分にスタートする「Oha!4」から、夜の「news zero」まで、1日でおよそ15時間半の生番組が放送されています。
CVセンターは、国内のみならず世界中から止まることなく送られてくる映像を「収録」し、正しく早く伝えるための「編集」を行い、視聴者に向けて確実に「送出」している部署です。
筆者2人は編集業務を担当し、最近では「ウクライナ侵攻」「新型コロナ」といったニュースから「大谷翔平選手史上初2桁勝利&30本塁打」「円安1ドル145円突破」など幅広いニュースに対応しています。


収録の様子


編集の様子

 

■その一報は突然…
ニュースの多くは、時間を問わず突発的に起きる災害・事件・事故です。中には想定を超える出来事も発生します。
参議院選挙を2日後に控えたあの日もそうでした…。

2022年7月8日 午前11時45分ごろ・・・

「安倍元首相が撃たれたらしい!」

「ストレイトニュース」の放送を終えて、昼食に向かおうとしていたその時、報道局から連絡が入りました。
まさに青天の霹靂ともいえる情報に、一気に緊張が走りました。


テレビでは安倍元首相銃撃を伝える速報スーパーが

 

■通常番組が中止、特番体制へ
11時50分。「3分クッキング」放送中にニュース速報が流れる。
12時00分。「ヒルナンデス」が、通常の放送を中断して報道フロアから速報を伝え始める。

第一報として扱ったのは、安倍元首相のアーカイブ映像。
これは映像で「誰に何が起こったのか?」を迅速に伝えるためです。

間もなく、事件現場の上空を飛ぶヘリが撮影した中継映像が届き、その映像で事件を伝えます。

その後、現場に到着した地上クルーが撮影した独自の映像が届き始めました。と、同時に、視聴者が偶然に撮影していた映像も次々に送られてきました。CVセンター内が一気に慌ただしくなります。収録された映像の確認が取れ次第、記者の指示のもと素早く正確に編集します。
1分や2分のニュース映像も、膨大な量の映像を編集マンが短時間で把握して取捨選択し、OAの時間に間に合わせるべく編集しているのです。

 

■参院選候補者にぼかし加工処理
この日、一番苦慮したことは、街頭演説をする安倍元首相の近くに映っていた参院選候補者にぼかし加工処理を行うことでした。
選挙期間中は公平性の観点から、特定の候補者を映す場合には、その選挙区の候補者を全員紹介しなければなりません。それができない場合には、候補者の顔や名前にぼかし加工を施し、公平性を担保しています。たとえ主題が事件であっても例外ではありません。

視聴者から提供されたスマホ撮影の映像は緊張や興奮からか手ブレが激しく、数秒間の映像でも加工するのにかなりの時間を要します。
映像を食い入るように見ながら慎重に確認し、かつ、いち早く放送できるように素早くぼかし加工を行います。
緊張と責任の重大さもあり、時間が過ぎるのが早く感じました。

 

■長時間にわたる報道特番
15時50分。ここまでおよそ4時間続いた報道特別枠を引き継ぎ「news every.」がスタート。東京のコロナ感染者数にまつわるニュースと、お天気コーナー以外がすべて「安部元首相銃撃事件」のニュースになりました。
怒涛の忙しさに、あっという間に「news every.」枠の3時間が過ぎていきます。
 

19時00分。ゴールデンタイムに突入しましたが、事の重大さから特別編成に移行。
報道枠を延長し、「news every.特別版」に変更。

21時00分。多くの視聴者が楽しみしていた「金曜ロードショー」も「news zero特別版」に変更。

昼過ぎから翌日深夜1時までおよそ13時間、ほぼぶっ通しの報道となりました。
関わったCVセンターのスタッフは約80人。編集した事件に関するVTRは約180本にものぼりました。

OAを無事に終えたことによる安堵感も大きかったですが、民主主義を暴力で否定する容疑者の卑劣な犯行に、怒りとやり切れなさがいつまでも強く残っていました。
一方で、翌日に控えた参議院選挙と、その夜に生放送される選挙特番「zero選挙」の準備にむけて、気持ちを切り替えなければ、と感じていました。

■筆者が感じたこと
栁下:
CVセンターでは、今回のような重大な出来事の編集に携わることがあります。
報道編集マンの仕事は、いま起きていることを視聴者に映像でダイレクトに伝えることができるのですが、選択した映像が一つ違うだけで、ニュースの印象がガラッと変わって伝わってしまうこともあるため、責任は大きいです。
分かりやすい編集を目指し、日々努力しています。
近藤:
生放送は自分の編集がOAに直結するため、常に緊張感があります。
今回の事件でも編集開始からOAが終わるまでずっと気持ちが張り詰めた状態が続いていました。
報道には明るいニュースもありますが、どちらかといえば悲しい痛ましいニュースの方が多いような気がします。それでも視聴者に事実を正しく知ってもらい、世の中の問題に目を向け、考えるきっかけをつくれるのは報道編集の醍醐味なのではと考えています。



筆者

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