REPORT 現場リポート

アメリカ大統領選挙 ~ テレビ局側のお話 ~

2020.12.15
制作技術・報道技術

日本テレビ報道局内には、デジタルコンテンツ(通称:デジコン)というチームがあります。アメリカ大統領選挙報道のときの現地からの連日の生中継の裏には、デジコンによる活躍がありました。

■ ネット回線での生中継
インスタライブ・ZOOM飲み・リモート授業などなど、いまや誰もがネット回線を使ってライブで繋がることが出来ます。
この1年間で世間的にもすっかり定着した“ネット回線を使った生中継”ですが、日本テレビでは数年前からいち早くネット回線中継を取り入れて定着させた分野があります。

それが報道番組での“海外からの生中継”です。
そしてそれらをテレビ局本社で“受け”の立場で担当するのがデジコンなのです。

上の写真は、先日放送されたアメリカ大統領選特番の際、現地5カ所から行われた中継の時の画像です。これらは全てネット回線を使ったものでした。

そしてこれらの映像はすべてデジコンで受信・調整されて放送されています。

上の画像の大きさだと、一見どれも同じ画質のように見えますが、実は上段に比べ、下段はあえて画質(データ量)を低くなるよう調整しています。それは映像を安定させるために必要な措置なのです。

みなさんは普段スマホなどでストリーミング動画を観ていて、動画の再生が途中で止まってしまった経験ってありませんか??そんな時、画質を低レートに変更してみたり、Wi-Fiに変えてみたり、遅延(追っかけ)再生モードにすると動画がスムーズに再生されるようになりますよね。

デジコンでもそれに似たような作業として、画質・通信キャリア・遅延の3つの調整を、専用の通信機器とアプリケーションを使って行っています。この調整が上手くいってないと、スムーズな中継が出来なくなってしまいます。

友達とするリモート飲み会なら少しくらい映像が止まろうがご愛敬かもしれませんが、テレビ放送の場合はそういう訳にもいきません。映像が止まってしまうと中継失敗、場合によっては放送事故になりかねません。
そうならないよう細心の注意を払いながら、キレイで遅延の少ない映像になるようにバランスをとって調整しています。


調整アプリ画面イメージ(加工あり)

■ 中継コーディネーション
ネット回線中継の際、もう1つ、デジコンが担う大切な仕事があります。
それが中継コーディネーションです。
中継では記者が書いた原稿を元に、中継カメラとVTRを組み合わせてOAする映像が構成されていきます。コーディネーションとは、
「カメラさん!いま中継カメラTAKEしています。ズームインして下さい!」
「記者さん!VTRで大統領が喋り終わるまであと5秒。…はい、原稿の続き読んで下さい!」
なんてことを伝える役割のことです。
これ言葉にすると簡単ですが、実際にはOAの流れや周りの状況が把握できていないと上手く出来ません。現場に最新情報が飛び込んでくると、本番の1分前に原稿が変更され、中継の段取りが変わることも多々あります。そんな状況での中継コーディネーションは手に汗握る作業です。無事終わったときは安堵感でぐったりします。

(左) 特番中のサブコン                              (右) 「ズームインしてください!」

■ そんなこんなで110回
大統領選が一段落した時に聞こえてきた数字なのですが、特番のあったおよそ1週間でアメリカからおこなわれた中継本数は、なんと110回だったらしいです!!

「110回もネット回線を調整して、110回も緊張感のあるコーディネーションをした!!」
そう言葉にしてみると、当事者しては中々に感慨深いものがあります。
もちろん私1人でやった訳ではなく、デジコン13人全員で達成した成果です。

現場の記者・カメラマンは、屋外で風に吹きさらされたり、周りの騒音で会話もしづらかったり、Wi-Fiつながらなかったり、めちゃめちゃ大変だったと思います。お疲れ様でした!
ただ4年に1度しかないアメリカ大統領選というビッグイベントを、アメリカ現地クルーと本社受けの“密な連携”で大きな事故なく終えられたことはデジコンにとっても私にとっても貴重な経験となりました。

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