REPORT 現場リポート

『ぶらり途中下車の旅』が30年目に突入!

2021.10.26
ポスプロ技術・報道編集

旅人・太川陽介さん、林家たい平さん、舞の海さんといえば、どんな番組を思い浮かべますか?
皆さんご存知の番組、『ぶらり途中下車の旅』です!

土曜日の朝、「今日は何しようかな~山手線か、この店美味しそう!ここ行ってみようかな!」なんて思いながら見る。そんな番組ではないでしょうか?


誰もがみたことある!このタイトル!

『ぶらり途中下車の旅』は、2021年10月2日に放送された都営新宿線の回で、放送開始から30年目に突入しました。

番組開始から約13年間は30分番組でしたが、現在は1時間番組に拡大されています。初回の放送から現在まで、撮影、オフライン編集、オンライン編集、MAまでのすべてをNiTRoが担当している貴重なレギュラー番組です。
25年この番組のオフライン編集に携わっている私が、番組作りの現在、そして未来に向かってどう変化していくのか、オフライン編集を通して紹介したいと思います。

 

■ 素晴らしき1カメショーの伝統、活かすも活かさないも編集次第

通常、番組のカメラは3カメ、4カメ、さらに定点カメラという複数カメラを使用するのが当たり前のこの時代、「ぶらり途中下車の旅」は1台のカメラで全てを撮りきる「ワンカメショー」です。

視聴者は旅人と一緒に旅をしている擬似体験を! というコンセプトでカメラが旅人である出演者をバックショットで追いかけるスタイルです。今でこそよく見かける撮影スタイルですが、出演者の顔が見えないまま進んでいくというこの演出は、当時ものすごくチャレンジングだったそうです。

番組1回分のロケを行うと、業務用メディアであるXDCAMディスクで平均15枚ほど収録されます。
収録時間は毎回およそ11時間分! その11時間分収録された素材を放送時間である52分にまとめるのです!


収録素材は平均13枚から15枚

まずは収録したXDCAMディスクのロケ素材を編集することができるフォーマットへデータ変換を行う、デジタイズ作業を経て、Adobe Premiere(アドビ・プレミア)というソフトを使用して編集します。
1回分のオフライン編集のスケジュールは8日間。その作業の流れを紹介します。

 

■ 編集1日目
初日は下見日となり、収録素材すべてに目を通します。
ディレクターと打ち合わせをして、「こんなところがおもしろいかも」「ここは上手くいかなかったからどうしたら良いだろう」等、番組の方向性を確認します。

■ 2日目~5日目
4日かけて、ひとり黙々と編集作業に入ります。

なぜ4日間もひとりで孤独な作業を行うのでしょうか?
それは、編集作業と並行してロケが行われることが多いため、制作チームが編集に立ち会えないという物理的理由もありますが、私たちエディターの技術力、感性を信頼してもらえているところが大きいです。

私たち編集マンが、”番組の最初の視聴者”として、「美味しそう!」「かわいい!」「これ欲しい!」「この話笑える!」「わかる!」「泣ける!」等、自分が感じた第一印象を頼りに組み立てていきます。
組み立てる順番や話の分量など悩みだしたら本当にキリがありません(笑)
まさにカメラマンが撮ってきたものを活かすも活かさないも編集マン次第なのです。


Adobe Premiereで編集します!                            汐留103stで編集中

 

 

■ 6日目・7日目
ディレクターが合流し、編集マンがひとりでまとめたものを元に、2日間かけて話し合いながら何度も修正をかけていきます。この作業は時間もかかりますし、意見が別れて何時間も話し合いが続き、作業が全く進まないことも多々あります。

大変ですが、お互いの意見を合わせて一つの番組を作り出していくこの工程が、オフライン編集の醍醐味であるとも感じます。


制作さんが合流した編集室。うるさいくらい明るい編集室を目指しています。

■ 8日目
プロデューサーをはじめ、制作陣が集まりチェックがはいります。初見の感想が、本当に大切だと毎回感じる瞬間です。
それを元にさらなる修正をかけて放送尺に仕上げ編集をします。

そして翌日に色調整や映像加工、テロップ入れを行うオンライン編集、さらにその翌日に音のバランス調整、ナレーション、音楽や効果音を加えて“音を整える”MA作業を行い、番組が完成します。


制作陣が集まってチェック中。毎回かなり緊張します。
 

■ 編集の未来
NiTRoではオフライン作業で完成した編集データはsharedというサーバーを通して、オンライン作業に直結できるようになっています。現在、当社のオンライン編集機はEDIUSという機種が主流のため、Adobe Premiereでのオンラインへ移行し効率を上げる方法を模索中です。
またクラウドを使って編集マンが在宅で作業し、制作スタッフと編集室で合流するという流れになる未来も遠くはないと思います。

 

30年の歴史ある『ぶらり途中下車の旅』。
番組のテイストはかわらずぶら〜りの~んびりですが、制作の裏側はかなりのスピードで変化しています。
そんな裏側を少し思い浮かべてOAを見ていただけると嬉しいです。


著者(中央)。両サイドの先輩にかこまれると、まだまだまだひよっこです。

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