REPORT 現場リポート

オリンピックってスポーツの祭典?~報道ENG班が見たオリンピック~

2022.03.15
制作技術・報道技術

こんにちは!取材技術部 カメラマンの小松亨です。
日本選手団が冬季大会としては過去最多のメダルを獲得した、2022北京オリンピック。
大陸の寒空を忘れさせるほど熱く盛り上がった今大会に、私は報道カメラマンとして参加しました。
コロナ禍で迎える2度目のオリンピック。東京大会と比べると格段に厳しいバブル方式がしかれ、活動エリアや撮影方法にも制限のある中、私達報道ENG班がどのような取材を行なったのか、お伝えしたいと思います。


■オリンピックってスポーツの取材だけじゃないの?
みなさんは、オリンピックと聞くとどういうイメージを持っていますか?
「4年に一度のスポーツの大会」、「世界的なスポーツの祭典」など、スポーツの大会だと認識している人が多いと思います。実際その通りで、私達メディアはオリンピックでのアスリートの頑張っている姿やインタビューを撮影するために、競技場内に入り取材を行います。ということは、オリンピックではスポーツ班の中継やENG取材しかないのでは?と思った方もいるでしょう。では、なぜ報道ENG班も競技場に入って取材を行うのでしょうか?

オリンピック憲章を見てみると、第1章にこのような文がありました。
「オリンピック・ムーブメントの目的は、オリンピズムとオリンピズムの価値に則って実践されるスポーツを通じ、若者を教育することにより、平和でより良い世界の構築に貢献することである。」
この文章を読み解くと、私達が普段オリンピックと呼んでいるスポーツ大会は、単なる競技大会ではなく、スポーツを通じて最終的には世界平和を目指す祭典だということになります。ここに報道の取材対象となる要素があります。

平和の祭典であるオリンピックには、毎回各国の要人が集まり、外交が行われることも多くあります。また、開催国が平和の祭典を開くに相応しいのかどうかという問題もあります。今大会では、アメリカやイギリスなどが中国の人権問題などを理由に外交的ボイコットを行いました。また、コロナ禍という事もあり、どのような感染対策を講じて大会が運営されているのかといった事も関心を集めました。

このように、オリンピックではスポーツだけでなく、外交問題や社会的な問題、また経済的な問題など報道としても関心の集まる要素がたくさんある為、私達報道ENG班も競技場に入って取材を行います。


■とはいってもメインはスポーツ!
実際にどのような取材を行ったかというと、競技が始まるまではメディアセンターの紹介やバブル方式の実態などの取材を行いました。
北京支局と協力してバブルの境界線で取材した際には、たった5mしか離れていないのに、中と外では生活の自由度が全く異なり、文字通り「近くて遠い」を体感しました。

そして、開幕してからは主にフィギュアスケートの取材を行いました。あれ?結局スポーツ取材じゃない!と思うかもしれませんが、オリンピック取材では日本テレビとして競技場内で撮影できるENG班は全部で6班しかいないので、報道ENG班がスポーツを撮影することも多くあります。日本テレビを代表して撮影するという責任感を持って取材に臨みましたが、普段スポーツの取材をする機会があまりないので、選手のスピードや被写体との距離に対応するのに苦労しました。

またフィギュアスケートでは、報道目線での取材も多くありました。
現地で話題になっているテニス選手がアイスダンスを観戦するのではないかといった情報があり、観客席を探す事もあれば、世間の高い関心を集めたロシアのワリエワ選手のドーピング問題でも取材を行いました。

このドーピング問題では、普段フィギュアスケート会場では見たことのないメディアも多く集まり、中には初めてフィギュアスケートを撮るといっていたカメラマンもいました。緊迫する取材現場でメディアの質問をうけ困惑する15歳の少女の表情を見たとき、カメラマンとして事実を伝えなければいけないという気持ちと、可哀想だなという気持ちの葛藤があり、どう切り取るべきか悩むところがありました。


■他にも様々な仕事が
私はENG班のカメラマンとしてオリンピック取材に入りましたが、現地では中継班の中継業務を担当する事もありました。オリンピックでは、競技エリア内に入れるスタッフの数も限りがあるので、取材だけでなく中継業務にも対応し、カメラマンとしてだけではなく、時にはVEとして業務にあたる事もできるように準備をしておかなければなりません。コロナ禍のオリンピックでは今まで以上に技術者としてマルチな能力が必要となりました。


■オリンピックで大事なのはチームワーク
今大会は私にとって3度目のオリンピックの現場でした。過去2回はスポーツ担当としての取材でしたので、報道ENG班としては初めての参加でした。

オリンピックでは数少ないスタッフで取材に臨むため、全ての部署が協力してチームワークを発揮しなければなりません。今回は制作技術や報道編集の先輩・後輩とコミュニケーションを取ることで、技術として円滑に取材ができたと思います。改めてNiTRoの部署を超えたチームワークの良さを実感しました。

次のオリンピックはどのような状況で開催されるのかわかりませんが、どんな状況でも対応できるカメラマンになれるよう、また準備していきたいと思います。


筆者

カテゴリ