REPORT 現場リポート

ドローンによる「AI熊検知機能」の実証実験を実施しました

2026.07.22
制作技術・報道技術

報道局映像取材部・ドローン班は、秋田放送の協力のもと、2025年6月29日から7月5日までの7日間、秋田県秋田市において、AI熊検知機能を搭載したドローンによる実証実験を実施しました。
本実証実験では、ドローンを遠隔操作し、近年、社会問題となっている住宅街に出没する熊の監視・パトロールを行い、AIによる熊検知機能の有効性や遠隔運航技術の実用性について検証しました。

 

■ 事前検証:サファリパークでのAI検知テスト
実証実験に先立ち、5月中旬に群馬サファリパークの熊エリアにおいて、AIによる熊検知機能の検証を実施しました。
検証では、ドローンを高度約50mまで飛行させ、熊までの距離約80mの位置から撮影を行ったところ、AIによる熊検知機能が正常に反応することを確認しました。(写真①)
その後、さまざまな飛行位置や撮影角度で検証を重ねた結果、真上から撮影した場合は検知精度が低下する傾向があることが判明しました。この結果を踏まえ、取得したデータをもとにAI検知機能の精度向上を図るため、業者へバージョンアップを依頼しました。
また、熊以外の動物に対する反応を確認するため、鹿やラクダなどでも検証を行いましたが、AIが反応することはありませんでした。一方で、熊エリア付近にサルが現れた際にはAIが反応する事例が確認されました。(写真②) 原因は特定できていませんが、AIがサルの体形やシルエットを熊と類似していると認識した可能性が考えられます。
 


(写真①)熊を見つけると黄色の枠で<Bear>と表示されます
(群馬サファリパーク)


(写真②) AIがサルと熊に反応

 

■ 実証実験(6月29日~7月5日)
実証実験は、秋田県秋田市御所野地区の住宅街において実施しました。
熊の出没が想定される早朝(午前4時~午前8時)および夕方から夜間(午後5時~午後8時)の時間帯に、望遠カメラや赤外線カメラを搭載したドローンを使用し、住宅街のパトロールを行いました。

 

(写真③④) 通常映像と赤外線カメラで撮影した映像の比較

 

ドローンは、事前に作成した飛行ルートに沿って飛行し、秋田放送の会議室およびホテルの客室を運航拠点として、パソコンによる遠隔操作で運航しました。熊の早期発見と安全な監視を目的に、住宅街周辺を継続的に監視し、ドローンによる遠隔監視の有効性や運用面について検証を実施しました。

 

■ 今回の飛行形態 「レベル3.5飛行」
今回の実証実験は、2023年12月に新設された新制度である「レベル3.5飛行」にて実施いたしました。
レベル3.5飛行とは、「無人地帯における目視外飛行」のうち、一定の条件を満たすことで立入管理の一部が緩和される飛行形態です。この飛行を行うためには、無人航空機操縦者技能証明(国家資格)の保有が必要となります。
分かりやすく言えば、操縦者がドローンの近くにいなくても、遠隔地からドローンを飛行させることができる制度です。ただし、自由に飛行できるわけではなく、安全性を十分に確保したうえで、飛行計画や運航方法などについて国土交通省をはじめとする関係機関へ必要な申請を行い、許可・承認を得たうえで運航する必要があります。
今回の実証実験においても、関係法令を遵守するとともに、必要な手続きを経て、安全対策を講じた上でレベル3.5飛行を実施しました。

 

■ 飛行経路図の作成
飛行経路図の作成にあたっては、国土地理院の地図を用いて飛行ルート上の緯度・経度を一つひとつ確認し、飛行計画を作成しました。
また、万が一ドローンが落下した場合を想定し、飛行高度、想定落下地点、周辺環境との離隔距離などを事前に算出しました。これらの資料は、飛行許可申請や安全対策の検討に必要不可欠なものです。今回の資料作成にあたっては、国家資格を所持している報道局映像取材部の方からアドバイスをいただきながら進めましたが、不慣れな作業であったため、作成にはたいへん苦労しました。

 


(写真⑤) 秋田市御所野 飛行経路図

 

■ 使用機材・システム
過酷な環境や遠隔操作に対応するため、以下の最新鋭の機材・インフラを使用しました。

●機体:DJI Matrice 4TD
 ・ 広角カメラ、中望遠カメラ、望遠カメラ、赤外線カメラを搭載
 ・雨天時の飛行に対応

●ドローンポート:DJI Dock 3
 ・ドローンの自動離着陸や充電を行う離発着基地
 ・飛行前後の機体管理を自動化し、遠隔運航を支援

● 通信機器
 ・Starlink(衛星インターネット通信)
 ・Wi-Fiルーター


StarlinkとWi-Fiルーターを組み合わせることで、安定した通信環境を確保し、離れた場所からドローンの遠隔操作や映像伝送を行いました。  

 

 
 (写真⑥) DJI Dock3(収納時:約640×745×770mm 重量 55kg 防塵・防水) 



(写真⑦) DJI Dock3(展開時:約1760×745×485mm)
 


(写真⑧) 秋田市御所野地区付近の空き地を借用(左Dock3 右Starlink&Wi-Fiルーター)

 


(写真⑨) <秋田放送の会議室> パソコンによる遠隔操作の様子


 

■ 実証実験の総括
1週間にわたる実証実験では、住宅街に出没する熊を検知することはできませんでした。しかし、ドローンの遠隔操作技術とAIによる熊検知機能や赤外線カメラ組み合わせることで、人が容易に立ち入ることができない場所や、早朝・夜間など視認性が低い時間帯においても、熊の早期発見や追跡に活用できる可能性を確認することができました。
また、熊の監視だけでなく、災害発生時の被害状況の確認や行方不明者の捜索、さまざまな分野への応用が期待されます。今回の実証実験を通じて、ドローンとAIを組み合わせた遠隔監視技術の有効性と将来性を改めて確認することができました。
今後も、報道局映像取材部ドローン班では、最新のドローン技術を活用した安全な運用に取り組むとともに、災害報道などに貢献できる技術の検証・活用を進めてまいります。

 


(写真⑩) 国家資格取得を目指す 筆者

 

 

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