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「遊星からの物体XD?」

2019.05.08 ポスプロ技術

私たち、ポスプロ技術部VPダビングルームのスタッフは日夜、国内外のスポーツ会場やスタジオから送られてくる映像の収録やメディアからメディアへのダビングなどを行っています。

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2019年はメディアの大きな転換の年!!
そこで今回はVPダビングルームだけではなく、汐留界隈にじわりじわりと浸透して来た"XDCAM"という、まるで思春期のお子様みたいに一筋縄ではいかないけれど、この先ずっと付き合っていくメディアとの奮闘記をお伝えします。


おさらいも兼ねて...

■ XDCAMとは
今まで放送用メディアとして使用されていたのは磁気テープが主流でした。
2000年頃に私が入社した時に活躍していたD2、ベータカム(BETACAM)、デジベ(Digital BETACAM)は、2004年頃からHDCAMへと移行していきましたが、それらは全て磁気テープです。
そんな一番付き合いが長かったHDCAMですが、日本テレビの放送用マスターテープとしては2019年3月31日放送分をもって取り扱いが終了となりました。
理由は簡単でHDCAMのテープ、デッキの生産とメンテナンスが終了するからです。あとは放送が終わった番組、取材などで収録した素材を最終的にデータとして残し、メディアレス化を進めるためです。
そこで日本テレビが次期放送用フォーマットに選んだのが、ファイル記録に対応したXDCAMというフォーマットです。XDCAMの記録メディアとしてはXDCAMディスク(Professional Disc)とSxSメモリーカードの2つを使用します。

■ XDCAMディスク(Professional Disc)とは
簡潔に言うと、映像や音声をデータとして記録する「円盤」であり、家庭用でいうとブルーレイディスクと一緒です。

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XDCAMディスクの特徴は耐久性があること。1000回以上の記録が可能で、読み出しは100万回以上、保存はなんと50年以上!
テープであるHDCAMは再生時、デッキのヘッドとテープが物理的に接触するので、何度も使用すると磁性体が剥がれるなどの原因で、画質の劣化が起こりますが、XDCAMはそれがない分、何度も使えて長期間保存ができます。

またHDCAMは保管場所の環境や置き方、衝撃などによってテープが劣化したりキズが入ったりして映像や音声にノイズが出てしまうこともあり、最悪の場合は放送に使えなくなることもありましたが、その点XDCAMはスゴイです。

さらにポイントとなるのはHDCAM(90分収録のラージテープ)の大きさが27cm×16cmで700g以上であるのに対して、XDCAM(95分収録の50GB)は15cm×14cmで200g以下と非常にコンパクトで持ち運びが物凄く楽ちん!!
「主役を引継ぐ、小さな大型新人」と言っても良さそうです。


■ お笑いと一緒

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メディアの大きさ、重さがコンパクトで軽量になり、非常に取り扱いやすくなりましたが、ケースが謎にツルツルなので、まとめて持つときはケースのくぼみに指を入れて掴むと安定して運べます。
メディアを落とすことは プロとして絶対にしてはいけません!
お笑いと同じで、"つかみ"がしっかりしていないと滑りまくります。

 

■ 現在のVPダビングルームでのXDCAMの運用
今、一番依頼が多いのはベータカム、デジベやHDCAMで保存していた過去の素材をXDCAMへダビングする作業です。
中には20年近くも前の素材テープが持ち込まれます。
「年代物」のテープは、ケースにホコリを被った状態で持ち込まれることもあります。私たちはテープを絡ませないよう、取り扱いには細心の注意を払いながら実時間を掛けてダビングしています。
現在、VPにはXDCAMのデッキが6台ありますが、素材テープとして一度に100本近くをお持ち込み頂くこともありますので、これらのデッキはほぼ毎日、フル稼動しています。


■ テープとココが違う
HDCAMでは記録された映像を消去する際には、「磁気イレーサー」と呼ばれる機器を使い、強力な磁気で中味を消していました。(イレース中に「カッコン、カッコン」と一斗缶を蹴った様な音を発していたのも、やがては遠い思い出となるのでしょうか)
しかしXDCAMディスクはイレーサー機を使わず、デッキでフォーマットをかけるだけで静かに消えます。ボタンを2回押すと消えてしまいますので「消している」感が無く、どこか寂しいものです。

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XDCAMディスクはテープのようにデッキ内で絡むことはありませんが、新たに生まれた"咬む恐怖"
ディスクそのものに、物理的な不具合が無いか、その確認のためにはデッキに挿入する前にディスクを振ってみます。
本来は振ると"カタカタ"と音が鳴りますが、問題があるとノーカタカタとなり、この状態でデッキに挿入するとデッキ内で咬んでしまい、取り出せなくなってしまいます。デッキに優しく呼びかけても決して出てきてくれません。取り出すためには一苦労です。

そんな事にならない様、挿入前にディスクを振って確認します。
毎日、振ります。これからも振り続けます。もう見慣れた光景ですが、第三者が見ると滑稽かもしれません。


■ 未知数の多い円盤
今までのテープでは苦労していたことがXDCAMでは楽になったと感心していますが、逆にXDCAMだからこそ注意しなければならない点もあり、作業中に起きる「未知との遭遇」に対してそれらの回避策を考えたりと、VPダビングルームだけではなくShiodome19Box全体で日々、試行錯誤しながら知識を深めております。

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  筆者


■ 最後に
今回の様なメディア転換期は、これからも起こるはずです。
家で何気なく見ているテレビですが、その画面の向こう側には違った楽しい世界があるのです。
XDCAMの取り扱いで疑問があれば、是非、Shiodome19BoxのVPダビングルームにご相談ください。