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運行技術部 発 ちょっとだけ技術なコラム 其の九 「BS 4K/8Kの話(1)」

2017.12.21 放送技術・写真技術

2018年開始のBS4K/8K実用放送とは?

東京オリンピック・パラリンピックを2020年に控え、新たに高精細、高機能な放送サービスを視聴者に提供するため、現在4K/8K放送の実用化に向けて様々な取組みが行われております。
「でも一体どうやって4K/8Kを実現させていくのでしょうか?」
ということで、BS放送で準備を進めている4K/8K放送の基礎となる話を、回を重ねて説明したいと思います。

■4K/8Kってそもそも何だ?
スマホに付いているカメラ設定に「写真画質:700万画素」「高画質:400万画素」「壁紙用画質:40万画素」などの設定があるのを見た事はありますか? 写真画質、壁紙用画質どちらで撮ってもスマホの画面で見ると同じように綺麗に見えます。ですがその画像を大画面で比較したときには壁紙用画質では粗くなり、モザイクがかかったように見えます。
画像を限りなく細い線でいろいろな種類の絵の具を使い、忠実に描いていけばいくほど「目でみたままの画像」に近づきますが、その反面色の種類や濃淡、線の太い細いなど「情報量」がとても多くなります。
つまり画素の情報量が増えれば増える程、大きな画面サイズでも綺麗に見えるという事を踏まえて下図を見て下さい。
2Kはみなさんが普段見ている現行ハイビジョンですが、これからのBS放送はそれぞれ「4K」「8K」と呼ばれる放送を行うべく着々と準備に入っています。4Kでは現行ハイビジョンの4倍、8Kにいたってはハイビジョンの16倍の画素数という、「大画面でも耐えうる綺麗な映像」をみなさまの家庭に届けることができる日が間もなくやってきます。
たとえばオリンピック・パラリンピックBS 4K/8K放送を大画面で見た時などには、陸上競技の汗、水泳の水しぶきなど、まるで会場にいるかのような臨場感を体感できるのです!

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出典:総務省ホームページ

■4K/8Kでは映像圧縮技術が変わります!
さて、先ほどの説明にもありましたように、4K/8Kは画素数も上がり高画質な映像を楽しめます。
しかしここで先ほども触れた問題が・・・
画素数が上がると言うことはその分の情報量、つまりデータ容量も膨大になってしまうんです!
最近では4Kプロジェクターが設置してある映画館も増え、店頭にも4K Ultra HDブルーレイが並ぶなど、4Kが身近になりつつありますが、今見ることができる4K画像は、膨大な映像データを何かしらのメディアに蓄積されたものから出されているということであり、内容自体がリアルタイムではありません。

しかし「放送する」という事は膨大なデータをリアルタイムでみなさまに届ける事になるのです。
そこで大きくて受け渡しに負荷がかかる膨大なデータを、なんとかして小さくする必要性があります。これには圧縮技術というものが使われています。
しかし現行ハイビジョンよりも更に膨大な4K/8Kでは更にデータ容量をコンパクトにしなければ放送ができません。
そこで4K/8Kでは「H.265/HEVC」という新しい圧縮技術を採用しデータ容量の軽減を図る事になりました。

現在の地デジやBSデジタル放送で使われているMPEG-2圧縮率を1とした場合に、H.265/HEVCではそれを0.25まで小さくでき、結果として同じ箱で4倍のデータ容量を送ることができます。
コンパクトかつ大容量ですね! この方式を使えばそれだけの圧縮効率がありますので4Kの映像データ量を現在のBSデジタル放送と同等に抑えることが可能となります。
「H.265/HEVC」圧縮にリアルタイムに対応できるまでには技術の進歩があってこそです。
大きなデータを一瞬にしてぎゅっと圧縮する「H.265/HEVC」ではMPEG-2圧縮の20倍の負荷がかかりますが、それが行なえるようになった技術の進歩がBS放送を変えたということです!

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H.265/HEVCの圧縮イメージ


■まだ続きます!
いかがだったでしょうか?
今回は「BS 4K/8Kとは何だ?」という話でしたが、BS放送はご存知のように衛星放送です。
4K/8Kを放送するにあたってはこのほかにもBSでの4K/8K放送を実現するための「帯域再編」「スロット」「トランスポンダー」「多重化方式」など様々な技術仕様が変化していきます。
その辺の説明は次回にしますので乞うご期待ください。それでは!