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運行技術部 発 ちょっとだけ技術なコラム 其の七 「放送+αな "データ放送"」

2017.06.14 放送技術・写真技術

放送コンテンツ+αな「データ放送」

■はじめに

リモコンのdボタンを押すと「ピコッ」という音とともに映像が縮小され、L字型に天気などの情報が表示されますね。
以前技術コラムでお伝えした通り、それが「データ放送」です。
テレビがデジタル化したことにより、データ放送のコンテンツも充実してきまして、視聴者がより多角的に番組を楽しめるようになっています。
放送局としてはより多くの視聴者を番組に取り込もうと、様々な工夫を加えてデータ放送をお送りしています。
さらにテレビが大型化したことにより、データ放送を表示しても縮小した主画面はかなりの大きさがありますから、十分視聴に耐えられるようになりました。


■データ放送の種類

このデータ放送は 番組非連動データ放送番組連動データ放送 の2種類に分けることができます。

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番組非連動データ放送

番組非連動データ放送は、放送している番組コンテンツとは直接関係のない情報を提供しているもので、主画面で番組を楽しみつつもニュース・天気・番組情報など色々な情報を同時に得られてしまう、というものです。
冬の季節であればインフルエンザなどの感染症情報も提供しています。
番組非連動放送は24時間お送りしていますので、「明日の天気は?」とか「今世の中でなにが起きている?」というような情報をすぐに得ることができますので、とても便利ですね。


番組連動データ放送

番組連動データ放送は、現在放送している番組をより充実させたりサポートしたりするためのコンテンツです。
OA中に番組内で出題されたクイズの解答やアンケートの投票、映画やドラマであれば途中からTVをつけた視聴者向けにあらすじを表示する、などがそれにあたります。
番組にデータ放送という"付加価値"を付けることで、より多彩に番組を楽しむことができます。



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上図はデータ連動番組のクイズに正解したポイントを表示するデータ放送画面で、クイズに参加するとポイントが貯まり、そのポイントでプレゼントに応募出来るというものです。非連動データ放送とは異なり、番組独自のデザインとなっています。
連動データ放送はすべての番組で行っているわけではありませんが、リモコンボタンを押して番組表(EPG)を見ると、連動データ放送を行っている番組には というマークが付いていますので、ぜひチェックしてみてください。
もちろん、連動データ放送の番組でもリモコンで選択すれば非連動データ放送を表示することができます。


■データ放送の仕組み

さて、このデータ放送の仕組みはどうなっているのでしょう。
データ放送を見てみると、ニュースや交通情報などの「文字」や気象図や晴れマークなどの「画像」が表示されますね。
このようにデータ放送で表示するためのテキストファイルや画像ファイルを"モノメディア"といいます。
さらに「この画像はここに配置せよ」とか「このボタンを選択したら、このテキストを表示せよ」というような命令が書かれたものを"BMLファイル"といいます。
これらのデータ放送の表示に必要なファイルは、モジュール化やカルーセル化といった小分け作業を行い、本編の映像音声信号に重畳したうえで、繰り返し送出しています。
この繰り返し送出することを"カルーセル伝送"といい、更新がなければ同じデータを繰り返し送り続け、ファイルの更新があれば中身を差し替えます。ちなみに"カルーセル"とは回転木馬のことで、ぐるぐる回るイメージからカルーセル伝送と名付けられました。

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上の図は、データ放送が天気予報だけという、もっともシンプルな場合のカルーセル伝送のイメージ図です。
天気予報のコンテンツはテキスト(文字)と画像(天気マークなど)の2つモノメディアと、位置や表示指令が入ったBMLファイルに分けられ、その3つのファイルが順番に繰り返し送出されて受信機に届きます。

データ放送のデータは、dボタンを押した時から取得が始まり、カルーセル伝送しているデータを1サイクル取り込んでからデータ放送コンテンツを表示します。そのため、dボタンを押してからデータ放送コンテンツが表示されるまでにしばらく時間がかかることもあります。
何回もぐるぐるデータを送出することで、いつdボタンを押してもデータ取得ができるようにしているのです。


■データ放送の機能としては他にも...

朝の情報番組では放送している画面に視聴地域の天気を被せて表示(オーバーレイ)するサービスも行っています。
これもデータ放送の一種でして、朝の忙しい時間帯にわざわざdボタンを押さなくても地元の天気が見られるようにしています。

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この表示がなぜできるかといいますと、受信機の初期設定をしたときに登録した「お住まいの地域の郵便番号」が関係しているのです。
全国の市町村数約1,700の郵便番号に付随したお天気データのモノファイルと、「このデータの中から、受信機で登録されているものと一致する地域の天気データをdボタンに関係なく表示せよ」という命令の入ったBMLファイルがカルーセル伝送されて、図の右側のようにお住まいの地域の天気が表示される、というわけです。
ちなみにこのサービスは放送局側が強制的に表示をさせているものでして、但しCM中はOFFになる仕組みになっています。受信側でOFF/ONするには各局独自の仕組みになっているようです。


■次世代のデータ放送、それはハイブリッドキャスト

これまでお話をしてきたデータ放送は、映像音声と共に電波に乗せて視聴者のみなさまに届けています。
しかしこのやり方だと、地上波の電波で伝送出来る情報量体の17Mbps(※註1)のうちデータ放送用に使えるのは1Mbps程度しかありません。
これではどんなに凝ったデータ放送を実施しようとしても限界があります。この制限の中でデータ放送制作者は色々工夫を凝らしているわけですが、それでも文字情報が中心にならざるを得ないのです。またテレビの大型化もあり画質面でも粗さが感じられます。

そこで、「映像音声は放送波で受信し、データ放送はインターネット経由でデータを受信する」という、放送と通信が連携したものが"ハイブリッドキャスト"と呼ばれるものです。

image6.jpgハイブリッドキャストの良い点は、インターネット回線を使用するので情報量の大きな画像でも簡単に伝送出来ます。
さらにデータ放送自体の画質やデータ量も向上し、またスマホとの連携も得意としていますから、番組で紹介した店舗や商品の情報は、慌ててメモを取らなくてもあとで確認することも可能です。
ただしハイブリッドキャストはインターネット回線を使用しているため、表示されるまでの時間はご家庭の回線速度や受信機の処理速度に依存します。
作り込み(その番組掲示方法)によっては、インターネット回線が繋がっていれば自動的にdボタンを押すとハイブリッドキャストで表示させる仕様や、ハイブリッドキャストへの誘導ボタンを表示する方法、非連動データ放送内にハイブリッドキャストへの接続ボタンがある仕様があります。ただし、ハイブリッドキャストは"ハイブリッドキャスト対応TV"じゃないとダメなんですけどね。
ハイブリッドキャストは非連動データ放送と同じく、24時間情報を提供しています。

このようにテレビ局では放送だけでなく、通信との融合も含めた新しい技術を駆使して、視聴者により良いコンテンツを提供しようとしています。


註1:「bps」は伝送出来る容量を表す単位で、bit per secondの略。1秒間に何ビットのデータを伝送出来るかを表している。この場合、約17Mbpsなので、1秒間に17,000,000ビットのデータを送ることが出来る。M(メガ)は10の6乗。
ちなみに地上波の最大ビットレートは約17Mbps(映像・音声・その他要素信号)ですが、BSデジタル放送の最大ビットレートは約24Mbps(映像・音声・その他要素信号)程度。