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アール・エフ・ラジオ日本発 ラジオミキサーのお仕事

2016.12.12 放送技術・写真技術

アール・エフ・ラジオ日本でのお仕事については、今まで『箱根駅伝』や『東京マラソン』などの"イベントもの"のレポートをしてきましたが、今回はラジオ日本の日常業務を紹介したいと思います。

AM局であるラジオ日本では、一週間のうち停波(放送休止)する月曜日の午前1時~5時までの4時間を除いて毎日放送をしています。

それにともない、私たちNiTRoスタッフの勤務形態も5勤務でローテーションしています。そのため朝の8:30に出勤することもあれば、夜の23:00に出勤することもあり、体調管理には気を配って勤務をこなしています。
多岐に渡るローテーションの中、私たちが局内でメインに行なっている業務は、生放送の"ミキシング"です。


■ラジオのミキサーとは?

ラジオの放送もテレビと同じように朝ワイド、昼ワイドなどがあり、朝の6:30~夜の21:00までは生放送で埋まっています。この生放送は全てNiTRoスタッフがミキシングを担当しています。

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ラジオ日本には生放送用のスタジオが4つ、収録用のスタジオが4つありますが、上の写真は一番大きな第一スタジオです。スタジオはディレクターと連携しながら実際にミキシングを行う"サブコン"と、防音ガラスを隔ててアナウンサーさんやパーソナリティさんが喋る"アナブース"がひと組になっています。

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これが第一スタジオのミキサー卓です。
それぞれのフェーダーにその番組で使う"音源"を割り付け、フェーダーを上下することでミキシングしています。

image5.jpgimage6.jpgimage7.jpg番組には大きく分けて"トーク中心の番組"と"音楽中心の番組"があります。
トーク中心の番組では、リスナーがリラックスして聴けるように歌のない"インスト"をBGMとし音楽中心の番組で曲紹介の喋りがイントロの尺にぴったりハマって、きれいに曲に乗り移れたときなどは、「よっしゃ、決まったぜ」となって、気分が良くなります。そんな時にディレクターさんから「○〇ちゃん、今のナイス!」と言われるのは、長年やっていても嬉しいものです。


■ラジオミキサーの心得 その①...準備が大切

私を含めラジオミキサーが共通して心掛けていることは"リスナーにとってストレスなく聴きやすい音を提供する"ことです。
リスナーのほとんどは、「運転しながら」や「家事をしながら」などの"ながらリスナー"ですので、リスナーが「ちょっと聴き辛いなぁ」とか「あれ?今なんて言ったの?」と思うことのないようにミキシングしています。

image8.jpgラジオは映像がない分、誰がしゃべっているのか?分かりやすくするために各人の声に特徴を付けるようにイコライザーを使って味付けをしたりします。
自分は、風邪をひいて声が出にくい方、滑舌が悪い方などは、高音域を上げて音を硬く、低音域を上げて柔らかくし、聴きやすい音に調整します。
また、それぞれの話し手が「普通に喋ったとき」、「絶叫したり爆笑したとき」の音量も把握しておき、本番時に生かします。これらはオンエア前のマイクテスト時に入念に行います。
この「事前の準備」がその番組の出来を決める、といっても過言ではありません。


■ラジオミキサーの心得 その②...ミキサーは最初のリスナーである

ラジオのパーソナリティはブースに隔離され、無音の空間で喋るため、今自分が喋っていることがリスナーにどう受け止められているのか、不安になるようです。そこで、ガラスの向こう側にいる私たちが適度なリアクションをしてあげることが意外に大切なんですね。
制作側はパーソナリティを乗せるべく、かなりオーバーなアクションをします。しかし彼らは同時にもう一人の反応を横目で伺っているのです。
...そう、私たちミキサーです。
ミキサーはもちろん番組スタッフの一人ですが、同時に"最初のリスナー"でもあるのです。制作側の人たちは、私たちミキサーの反応の向こうに多数の一般リスナーを見ているのです。

image9.jpg軽く笑ったり、「へー、なるほど」「今の話、いいっスね」と言葉を発したりして、素直に反応することで、番組がスムーズに進行し、ひいては制作さんやパーソナリティさんとの信頼関係の醸成につながります。
よく「ミキサーに必要な資質ってなんですか?」と聞かれます。
知識、ウデ、体力...いろいろありますが、私はこの社交性?いや!コミュニケーションですね。これがもっとも大切な資質だと思っています。いくら知識やウデがあっても、これがないと長続きしませんし、仕事が楽しくありません。


■生放送中にはいろんなアクシデントが...

生放送を事故なく行うためには、毎回念入りに機材チェックをしてから本番に臨んでいますが、それでも思わぬアクシデントが起きます。 いくつか起こりそうなケースを紹介しましょう。

ケース1. フェーダーを上げてもCDの音が出ない
バックアップのBGMに切り替えることもありますが、大抵のパーソナリティさんは気心が知れているので、こちらの事情を察してくれてその場を繋いでくれ、その間にミキサーがリカバーします。
「あ、曲がまだ準備中だそうです。アハハ...じゃあ先ほどの話の続きをしますかね...ん?準備できた? あ、そう。それでは行ってみましょう」 こんな感じですかね。

ケース2. 生放送中にマイクの音声が途切れる
これは喋りでは繋げませんから、バックアップのBGMを上げたり、次に流す曲を先行して発射したりします。その間に他のマイクを取り換えてリカバーします。これもあとでパーソナリティさんに取り繕ってもらいます。
「あれ? 話の途中で曲行っちゃったみたいだけど...ん?マイクの調子が悪くて取り換えた? あ、そう、へー...じゃあ私の声、より魅力的になっちゃったりなんかして...みなさーん、どうですかー?」 
...パーソナリティさんもプロですね。感謝しています。

ケース3. ニュース速報を入れる
これはもう、アクシデントというよりも日常茶飯事ですね。 
ラジオの場合は番組を中断して速報を割り込ませます。
報道局からニュース原稿を持ったアナウンサーさんが放送中のサブコンにやって来て、ニュースの内容や尺はどれくらいかをディレクターと打ち合わせてからブースに入ります。
ニュースの重要度・緊急性にもよりますが、だいたい曲終わりやトークの切りのよいところで割り込ませます。CM明けもグッドタイミングです。
逆に大地震が起きた場合は、番組を中断してそのままニュース番組に移行します。これはテレビ局と同じですね。ミキサーとしてはかなりのスリルを味わえます。

超レアケース. 生放送5分前にスタジオの電源がクラッシュ!
主演者スタッフ全員が隣のスタジオに猛ダッシュ! 各所へスタジオが変わったことを伝え、準備もそこそこに本番突入です。 不思議なことに、こういう危機的な状況になるとチームって結束するんですよね。全員が余計なことを考えずに与えられた仕事を全うすることによって、番組は何事もなかったかのように進行しました。 終わったらどっと疲れはでましたけど。

アクシデントは起きないに越したことはありませんが、それをノーミスで乗り切れたときは不思議な達成感に浸れますね。


■最後にPRを...

ラジオが皆さんお持ちのPCやスマホでも聴けるようになったこと、知ってましたか? 
いろいろなアプリがありラジオ日本をはじめ、世界のAM、FMを楽しむことができます。もちろん無料。

そのひとつ、「radiko(ラジコ)」ではこのほかに、"シェアラジオ"というサービスが始まりました。これは『自分が聴いていて気に入った番組をSNSなどを通じて知り合いに教える⇒教えられた人はURLをクリックするだけで聴ける』という機能です。
他にも"タイムプラス機能"といって過去一週間に遡って放送を聴けるサービスなどもあります。
スマートフォンやPC、インターネットの普及によってラジオの垣根がだいぶ下がってきました。
"ながらリスナー"のなかに、"メールを打ちながら"、"プレゼン資料を作りながら"という方がこれからは増えていくのかもしれません。

皆さんもより身近になったラジオをぜひ聴いてみてください。
その向こうには私が座っているかもしれません。

image10.jpg筆者