ニュース

WOWOWではファイルベース化が着々と進んでいます

2016.11.22 放送技術・写真技術

東京の湾岸地域である江東区辰巳に㈱WOWOWの放送センターがあります。その中のファイリング室では、現在11名のNiTRoスタッフが従事し、WOWOWの安定放送を支えています。
ここでの業務の概要に関しては、「WOWOWを支えています!」をご覧ください。


■ファイルベース化で変わること

WOWOWでは2015年6月より、放送用完パケ番組を従来のテープではなく、ファイルで納品することのできるシステムが稼働しています。これにより、収録~編集~納品~アーカイブまでの作業が、ファイルベースで運用できるようになっており、現在はWOWOW辰巳放送センター内で制作している番組から運用を開始しています。

image1.jpg
今までは、辰巳放送センターでサーバーに収録したデータを、テープに書き出して編集したり、ノンリニア編集で完パケにしたデータをテープに書き出して納品するなどしていましたが、全てをファイルベースで行うことにより"テープレス"になり、作業の効率化が図れます。

また、ファイル納品された素材をLTOテープへのアーカイブ化(保存)を自動で行うシステムも稼働しており、WOWOWの財産となる映像素材や完パケ素材などが社内ネットワークを介して保存されています。

ちなみに、アーカイブされたファイルは担当者のデスクにあるPCでプロキシデータとして見ることが可能で、これにより素材検索がとても便利になりました。
この先ファイルで制作される番組が増えれば増えるほど、多くのファイル素材を共有することができるようになります。番宣の制作も、それらのファイル素材を使用することで、作業がスムーズになることが見込まれます。


■ファイリング室への影響

ファイリング室では、WOWOWで放送する全ての素材をサーバーへ取り込み、技術的なチェックを行い、マスターへと送り出しています。ファイルベースでの運用は、当然ファイリング室にも影響を与えます。

まず、テープの納品受付から、ライブラリー室への返却までの期間、ファイリング室内でテープを保管している必要がなくなりますので、その保管スペースが空きます。

テープを台車に乗せて、ゴロゴロと運ぶ手間もなくなります。
テープは大事な財産ですから、傷つけないように慎重に運搬する必要がありますが、ファイルではそういった心配はありません。
そして、やはり作業の効率化になります。
テープからのファイリングでは、テープを通常通り再生する必要があるため、収録されている素材尺と同じ時間がかかりますが、ファイルの転送は素材尺の1/5程度で終了します。
納品からOAまでがタイトなスケジュールになっている場合、素材尺と同じ時間がかかるのと1/5で終わるのとでは、その後の作業に大きな違いが出ます。

また、リピート放送用にはテープを再度ファイリングする必要がありますが、その場合には、テープのコンディション不良から、映像や音声にノイズが発生し、ファイリング作業の滞ることもありました。しかしファイルではそのような手間もありません。

ただ...
我々はあまりにもテープ文化に慣れ過ぎているのかもしれません。

テープという「実体」があると、素材を納品した・された、テープを返却した・された、などのセクションごとの受け渡しが、目に見える"かたち"を通して行われます。
しかし、ファイルは全てネットワークを介してやり取りされるため、テープのような"かたち"がありません。

ファイリング室は放送素材の納品場所となっているのですが、テープが届く=納品という様な、目に見えるキッカケになるものがファイルにはなく、シレっといつの間にか転送が完了している...というように、掴みどころがないと言いますか...なかなか馴染めない面があります。

テープはテレビ放送が始まって以来、もっとも安定して信頼の置ける記録媒体として活躍してきました。それが今では「枯れた技術」という扱いを受け、近い将来なくなってしまうと思うと、私のような長年テープに慣れ親しんできた者にとっては、一抹の哀愁を感じてしまいます。

しかし今の若者にとっては、そんなセンチメンタルな感情はお持ちではないようで...

ファイリング室にも、20代の若者が数名おります。
実は、この若者たち...研修を行うと、テープ納品の運用よりも、ファイル納品の運用についての方が早く覚えるのです。曰く、テープをVTRで操作することに慣れるのが難しいとのこと。

生まれた時から携帯が存在し、物心がついた頃から身の回りにPCがある環境で育っている若者にとって、取っ付き易いのはテープではなく、ファイルのようです。

image2.png













筆者