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日本テレビの回線管制室SDC/SOC

2016.11.14 放送技術・写真技術

日本テレビでは箱根駅伝をはじめとしたロードレース、24時間テレビなどの大規模イベント、そのほかにもプロ野球中継などのスポーツイベントの中継を行っています。
このように各地で進行中の企画の映像素材をテレビで放送をするためには、素材を現場から一度日本テレビ本社で受け取り、適切な場所に適切な経路で送る必要があります。
みなさんは、その日本テレビまで映像素材を伝送する方法をご存知でしょうか?
今回ご紹介するSDC/SOCという部署は、その中核を担っている部門です。今年の8月27日・28日と2日間にかけて行われた24時間テレビを例にして、SDC/SOCの業務をご紹介をしたいと思います。

■そもそも、SDC/SOCとはどのような職場なのか?

image1.jpgまず部署の名前を見ると、同じような名前が2つ並んでいて一見何の違いがあるの?と不思議に感じると思います。これは、それぞれ異なった業務内容の頭文字3文字を部署の名前として使用しているためです。










■SDCについて

SDCとは、Signal Distribution Centerの略で、日本テレビに入ってきた様々な回線を社内のスタジオや収録先、または社外に分配する部署です。社内に入ってくる回線として主に、電波を使用したFPU回線やSNG回線、光ファイバーを使用した伝送回線などがあります。それぞれの特徴は以下の通りです。

●FPU回線
FPUとはField Pick-up Unitの略で、マイクロ波を伝送経路として使い、現場から受信基地局に対して映像素材を伝送する方法です。
基本的に、衛星通信に比べて遅延量が少なく、低い周波数帯を使えば降雨などによる減衰も少なくなります。しかしながら、直進性の強い高帯域の電波を使うため、基本的に送信機と受信機は見通しが立っている必要があります。このマイクロは前回リポートした箱根駅伝予選会でも使用しました。

●SNG回線
SNGとはSatellite News Gatheringの略で、通信衛星を使い現場から映像素材を伝送する方法です。
伝送に使用する通信衛星は地上36,000kmの高度にあるため、電波が往復する時間だけでも、約0.25秒の遅延が発生します。また通信にはFPUで使う周波数よりさらに高い周波数を使用するため、降雨による減衰を受けやすくなっています。

●光ファイバーを使用した伝送回線
伝送路設備を保有する電気通信業者の光回線を借用し、本社まで映像素材を伝送する方法です。
大規模な中継の箱根駅伝や24時間テレビ、選挙特番などではこれらの回線を使い分けるためにSDCは大活躍します。

■SOCについて

SOCとは、Satellite Operation Centerの略で、通信衛星の管制を行う部署です。衛星はNNN系列で借用しているため、ネットワーク局の回線も日本テレビのSDCで管制しています。
衛星を使用するメリットは、特定の方角に障害物がなければ、日本国内どこからでも映像素材を伝送することができる点です。また基本的に衛星通信ができる中継車さえあれば、映像素材の伝送が可能になるので、特に災害などが発生した際に活躍します。

■24時間テレビでは

image2.jpg今年の24時間テレビでは「マラソン」や「遠泳」、「富士山登山」など様々な場所からの中継が行われました。これらの中継のために今まで紹介した伝送手段を用いて、日本テレビ本社に2日間合計で50本近くの入力回線がつながりました。このうち、武道館とは10本近くの回線がつながりました。
「なぜ、移動などがないはずの武道館からこんなにも回線がつながるのか」と疑問を持つ人も多いと思いますが、これには事情があります。






想像してみて下さい。
24時間テレビチャリティマラソンのゴールシーン。技術的なトラブルで映像が乱れたり、フリーズしてしまったりしたら、視聴者の皆さんはどのように感じるでしょうか?
どんなに感動的なシーンが最後に待っていたとしても、もしかしたらそのトラブルで伝わるものが半減してしまうかもしれません。
このような事態を避けるため、予備の系統を作り、放送の進行に影響が出ないように備えているのです。特に武道館は、24時間テレビのメイン会場ということもあり、予備のさらに予備回線まで準備しています。

さらにSDCでは、日本テレビ本社で受けた回線を、SDCの設備を用いて適切な部署に、適切な経路で割り振る必要があります。例えば、中継などの番組で使用する場合はその受けとなるサブへ、また収録する必要があれば収録センターなどへ送る必要があります。
24時間テレビのような大きなイベントになると、入・出力の回線がかなり混み合います。どこにどの素材が入力され、さらに分配されているか、把握するのも一苦労です。

image4.jpgimage3.png

この写真は、SDC内のパッチ盤と呼ばれる"ケーブルを接続するパネル"の一例です。パッチ盤は通常の系統とは別に"イレギュラーな信号の分配"などを行う時に使用しています。左側の写真を見てわかる通り、ここだけで百本近いケーブルを使い信号の分配をしています。業務が終わった後の片付けの際などには、抜いてはいけないケーブルを抜かないよう、指さし確認は必須です。

今回、ここで紹介したのは24時間テレビで使用された回線のほんの一部です。SDC/SOCでは、さらにこれ以外にも、日本テレビ社内で使用している時計の時間の管理をしたり、日本テレビ社内のサブコンなど特定の場所同士の通話を可能にする「室間インターフォン」と呼ばれるホットラインの管理、VHF無線、電話回線を利用した現場と本社の通信用回線の管理をしたりなど、日本テレビ内の多岐にわたる回線の管理を行っています。

この後も箱根駅伝をはじめとしたロードレースや各種イベントが控えています。我々SDC/SOCは、スタジオや中継の現場に比べると決して派手な仕事ではないかもしれません。しかし、現場の映像素材を確実に視聴者に届けるため、日々活躍しています。

image5.jpg 筆者