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回線ブッキング業務ってなに?

2016.04.21 放送技術・写真技術

例えば、皆さんお持ちの携帯に同時に5本の電話がかかってきたとしましょう。
受けられるのは1本だけで、残りは話し中になって、
留守電に入れてもらうか、折り返し電話するか、
またかかってくるのを待つか、いろんな対応をしますよね。

これを放送局(日本テレビ)に置き換えてみましょう。

 ・東京ドームから巨人戦の中継映像が送られて来て、生放送する。

 ・同時にこの中継映像をネットワーク局で生放送するために送る。

 ・同時に海外からサッカー日本人選手の試合映像が送られて来る。

 ・同時にネットワーク局のニュース用に日テレが取材した映像を送る。

 ・同時に発生した複数の災害現場から取材映像が送られて来る。

これを携帯のようにひとつずつ処理して残りは後回しに...という訳にはいきません。
放送局は現在放送している番組の裏で、同時にたくさんの別の映像のやり取りをしています。
そうすると誰か交通整理のように仕切る役割の人が必要になります。

それが私たち回線ブッキングです。

なに?「大昔の電話交換士みたいなもんか」だって?

...まあ、当たらずとも遠からず、ですね。
ただし、「日テレと相手とを結ぶときに、もっとも効率のよいルートを考える」
というひと手間が加わりますけどね。

つまり、映像を送ったり受け取ったりする手段として回線を使用し、
それらの回線を手配、調整(ブッキング)するのが私たちの仕事です。

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※業務イメージ画像

さて、私たちが商売道具にしている回線は主に3つあります。

 ・NTTコミュニケーションズ様の放送用回線を利用したネット回線

 ・スカパーJ-SAT様の通信衛星(スーパーバードB2号機)を利用したSNG回線

 ・KDDI様、ソフトバンク様、NEXION様など、回線事業社のサービスを利用したキャリア回線

これらを状況に合わせて使い分けたり、組み合わせたりしています。
ひとつずつ簡単に説明しましょう。
イメージ図をご覧になりながらお読みください。

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ネット回線

日本テレビとネットワーク局さんは、
NTTコミュニケーションズさんが敷設した専用の光回線で結ばれており、
自由に映像のやり取りができるようになっています
(ただし使える回線の数は限度があります)。

これがネット回線です。
局と局で映像のやりとりをするのにもっとも手っ取り早い方法です。

日本テレビで現在放送している番組を
同時放送するネットワーク局さんに送っているのもこの回線ですし、
逆に、大阪の讀賣テレビさんが放送している『秘密のケンミンSHOW』などは、
讀賣テレビさんからネット回線を使って日本テレビに送ってもらっています。

もちろんやりとりするのは番組だけじゃなくて、撮れたてのニュース素材なんかもやりとりします。

SNG回線

局と局を結ぶ基本がネット回線。
では"局以外の場所"と局を結ぶときはどうするか。

そこで活躍するのがSNG回線です。

SNGとは、SサテライトNニュースGギャザリンクの略で、
要するに衛星を使うわけですな。

例えば夕方のニュース番組『news every.』で、
とある郊外に大規模ショッピングモールがオープンした模様を生中継するとしましょう。

中継車が現地に行って中継準備OK。
その映像を光ケーブルを敷いて日本テレビに送ってもいいのですが、
たった1回の中継のためにそんなことをするのは面倒だ。そこで衛星を使って送るんです。

現場の中継車のパラボランテナから通信衛星めがけて電波発射
⇒東経162度、赤道上空3万6千キロに鎮座するスーパーバードB2号機がこれをキャッチ。
信号を増幅して電波発射
⇒日本テレビ屋上のパラボラアンテナがこれをキャッチ。

はい、つながりました。

キャリア回線

それでは、もっとうんと遠い場所から映像を送ってもらうにはどうしましょう?
 例えばドイツで活躍するサッカーK選手の試合を現地から送ってもらいたい。

これはもう日本テレビだけではどうにもなりません。
回線事業社さんに頼みます。これがキャリア回線です。

そのときもちろんこちらから要望を出します。
「海底ケーブルが切れても無瞬断で、遅延が少なくて、費用が安くてetc」...
そうすると回線事業社さんもその道のプロですからせっせと考えます。

ここからここまでは光回線を使って、その次は衛星に飛ばして、
それをここで受けて、その次は...。
そうやってプランニングされたルートを通って映像は日本テレビに辿り着くのです。

実のところ回線ブッキングでは、
海外から日本に辿り着いた映像を分岐ポイントから
日本テレビに送ってもらう回線の手配だけをやっています。

ざっくりご説明しましたが、
まあこのような回線を運用してネットワーク局や現場と
日本テレビとで映像のやりとりをしているわけです。

ちょっと、「回線ブッキングって平和そうな部署だな。上の写真もまったりしてるし...」
と思っているそこのアナタ!

確かに世の中が平和ですと回線ブッキングも平穏です。
(実はレギュラーのブッキング作業も相当量あるんですけどね)
しかし「浅間山が大噴火!」なんてことが起きると事態は一変します。

地元局では中継車を出します、ヘリを飛ばします、取材クルーは出します、
近県からも取材応援が出ますで、それは大変なのですが、
その膨大な量の、しかも一刻も早く視聴者に届けたい映像を
どうやって日本テレビに送ってもらうか?

報道のデスクさんと回線ブッキングスタッフがタッグを組んでの闘いが始まります。

 報道「テレビ信州の報道スタジオとすぐにつないでください」

 回線「了解しました。〇番線につなげます!」

 報道「ネット回線で長野から〇時~〇時をお願いします」

 回線「〇時はネット回線の空きがないので、SNG回線でどうでしょう?」

 報道「了解、ではそれでよろしく!」

みたいに次々と差配しなくてはなりません。

ではこれに「某県で人質立てこもり事件発生!」
「ブンデスリーガでK選手がハットトリック!」みたいなことが同時に起こったら、
いったいどうなるのでしょう?

トランプで神経衰弱っていうゲームがありますね。
あれを3つ同時にプレイするようなものです。頭がおかしくなりそうです。

「えーいうるせー! もうやってらんねーよ!」と投げ出したいところですが、
決してそれは言いません。言えません。

なぜなら、その時のために私たちがいるのだから。

冷静に、受けるべきor送るべき映像の優先順位を判断し、
空き回線と空き時間をジグソーパズルのように埋めてゆく。
最後の最後まで捌き続けます。

そうして各局さんから送ってもらった映像が無事にオンエアされたとき、
ささやかな達成感と安堵感に包まれるのでした...。

回線ブッキングのこと、少しはご理解いただけたでしょうか。
最後に私たちが常に心がけていることをお知らせします。

「電話は優しく、ゆっくり丁寧に。用件は必ず復唱」

20160414151824.jpg 筆者