REPORT 現場リポート

SFL: Pro-JP 2023におけるEagleEye+ARシステムの実践導入

2024.02.02
制作技術・報道技術

NiTRoでは2022年シーズンより「ストリートファイターリーグ: Pro-JP(SFL: Pro-JP)」の運営をしています。
ストリートファイターリーグとはCAPCOM発売の大ヒット対戦格闘ゲーム 「ストリートファイターシリーズ」を使用した日本最高峰の公式チームリーグ戦です。
2023年シーズンはシリーズ最新作「ストリートファイター6」で開催。9チームが7月から本節を戦い、上位2チームが「グランドファイナル(決勝戦)」に進出しました。
グランドファイナルは2024年1月13日。当日は小雪の舞う肌寒い日でしたが、新宿住友三角広場に1200名超の観客を迎え熱気あふれる対戦が繰り広げられ、日本最強チームが決定しました。

 

■ SFL: Pro-JP 2023グランドファイナルでの新たな挑戦
今回のグランドファイナルでは新しい試みとして、EagleEyeを実践導入しました。
スイス・SEC Swiss社が開発したEagle Eyeは、四隅に設置したウインチと滑車でケーブルを引っ張り、カメラを搭載したジンバルを吊って移動させるサスペンデッド4点ケーブルカメラシステムで、AR(アグメンティッド・リアリティ)にも対応しています。会場四隅から吊り下げたケーブルから上下左右を操縦することで、平面だけではなく空間的な映像を表現でき、臨場感・迫力ある映像を映し出すことが可能です。
今回使用したのは100メートル四方タイプの「Eaqle Eye:EE100」で、これは実機としては日本にまだ2台しかありません。

今回はSFL: Pro-JP 2023の技術統括担当の横瀬勉より、EagleEyeのセッティングやオペレート、映像表現などの解説をいたします。

 


 

■ 機材セッティングと設定
ケーブルには円盤状のヘッド(EagleEye)とジンバル(M3)が吊られ、それを介してソニー製カメラヘッド(HCP-P50)、キヤノン製レンズ(HJ14e×4.3)というセッティングをしました。
EagleEyeヘッドの中にはリチウムバッテリー3個を搭載し、ジンバルとカメラヘッドの電源を供給。これで4時間程度のオペレートが可能です。


(左)客席から見たEagleEyeシステム                  (右)EagleEyeヘッド(円盤)の内部
 

カメラの最低地上高は2.5mとしました。今回客席には応援用のスティックバルーンを用意しましたが、お客様が立ち上がってスティックバルーンを振ったときにも当たらない高さを想定し、リスク回避という意図もありこのような設定にしました。
ヘッドの最大移動速度は6m/sですが、実測はそこまでのスピード感はなかったように思えました。
本来であればカメラをもう少し低くして観客上空を”なめて”トラックするかズームを足しながらのドリーをした方がさらにスピード感が出て効果的に表現できたと思っています。


(左)EagleEyeとジンバルを介して吊り下げられたカメラ     (右)会場四隅に設置されたウインチ(ケーブル巻取装置)

ヘッドには点滅するLEDが仕込まれており、円盤状のヘッドが客席の上空を縦横無尽に動き回る様子はお客様にもインパクトを与えられたものと思います。

 


 

■ オペレート
EagleEyeは基本的にはツーマンでのオペレートが必要で、「パイロット卓」「カメラマン卓」の2つで操作します。
パイロット卓ではジンバルの前後左右上下の動きの操作、カメラマン卓ではPAN、TILT、ROLL、ZOOM、FOCUSなどのカメラ操作を行います。ズームスピード、フォーカスレンジ幅、ジョイスティックのカーブなどは設定で変更ができますが、ズーム(シーソー)の頭に少し遊びがあるため、操作には慣れが必要です。


(左)パイロット卓                    (右)カメラマン卓


今回導入してみて、パイロットとカメラマンのコンビネーションが非常に大事であるとわかったことは実践において大きな経験になりました。今回のパイロットは普段から顔なじみのヌーベルバーグ(協力会社)所属のカメラマンだったので問題なくオペレートできました。
結果としてパイロットとカメラマンが相互にコミュニケーションを図りながら、その時々にあった迫力のある映像を切り取ることができたと実感しています。

 

■ EagleEye導入の最大の目的
今回のEagleEye導入の最大の目的は、ARと連動したカメラ演出にありました。Vizrtというシステムを使用したARとEagleEyeのドッキング運用は日本では初めての試みでした。
当然ながら映像、CGチームも初めての機会であり、かなり手さぐりではありましたが、無事に実現できてほっとしたというのが本音です。
映像表現としては、EagleEyeを客席上空に位置し、奥行き感のあるカメラワークをしましたが、選手入場時や対戦時でのARを絡めたカットでは効果的な表現ができたのではないかと思います。本来であれば動きのバリエーションをもう何パターンが表現できた方がよかったかなと思っていますが、それは次回の課題とします。


AR(バーチャル)操作チーム

SFL: Pro-JP 2023グランドファイナルはYouTubeのアーカイブに動画があります。ぜひ[こちら]をご覧ください。

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